〈65〉特別講座【原画と楽しむ絵本の動物】

2019年2月17日(日)

 

第65回KBS・第三回特別講座・藪内竜太氏講演/薮内正幸動物原画展【原画と楽しむ絵本の動物】を開催しました。
新潟や仙台など関東圏外からも多くのファンが集まってくださいました。

初めての原画展で勝手がわからず、どうなることかと心配しましたが、竜太氏が娘さんを有能な助手として連れてきてくださいました。おかげでスタッフは何も手伝う間もなく、あっという間にセッティングが終了しました。
この娘さんは、原画の台座作りも手伝ってくださったそうで、感謝に堪えません。

会場には、できるだけ多くの書籍にも触れていただきたいと思い、スタッフ蔵書だけでなく近隣の図書館から借りた本もたくさん展示しました。

 

親子の時間

今回の特別講座は、最初に30分絵本の読み聞かせをしました。大人の方々も手遊びに参加していただき、子どもたちも積極的で、予想以上に盛り上がりました。

 

読み聞かせ絵本は、

『もうおきるかな?』

もう おきるかな? (0.1.2.えほん)

 

『しっぽのはたらき』

しっぽのはたらき (かがくのとも絵本)

 

『どうやってみをまもるのかな』

どうやってみをまもるのかな (幼児絵本シリーズ)

 

『おかあさんといっしょ』

おかあさんといっしょ (幼児絵本シリーズ)

 

2わのことり♪では、指に止まった小鳥が、いなくなったり戻ったり、小さな子は不思議そうでした。

大人の講座中、キッズルームでは子ども自身が小鳥を指にはめて遊んでいました。

 

2わのことり

2わのことり かわいいことり

とまっているよ きのえだに

 

1わはチッチ 1わはピッピ

チッチ ピッピ チッチ ピッピ

 

とんでけチッチ とんでけピッピ

おかえりチッチ おかえりピッピ

 

2わのことり かわいいことり

とまっているよ きのえだに

チッチ ピッピ チッチ ピッピ

 

読み聞かせの間に遊んだ「くまさんねんねんころり」という揺れるクマの親子は、子どもたちも製作しました。

保育関係者の大人にも好評で、

「後ろはどうなってるの?どうやって動かしているの?」と講座後に質問されました。

子どもたちが作ったクマの親子。

藪内竜太氏講演

竜太氏の講演は、ファンが多いだけあって本当にお話が上手でした。

元々は安定したサラリーマンだったのに

、経済的に不安定な美術館長を嫌々引き受け、宣伝のために仕方なく講演をしている、とはとても思えません。

30歳の時にお父様の薮内正幸氏を亡くされ、直接伺ったお話より周囲の方々から聞かされたエピソードの方が多かったそうです。
それはそうですよね。もっと年を取って亡くした親とも、もっといろいろ聞いておけば良かった、と思うことが多いのですから。

 

残された手紙や資料を調べ、大量に遺された原画についても調べ、関わりのあった方々のことも調べてお話を伺って情報を組み立て、様々な内容を盛り込んだお話でした。
高橋春雄氏、今泉吉典氏、松居直氏、小菅正夫氏などとのエピソードは面白かったですね。

「天才的な画家かどうかはわからないけれど、天才的に動物が好きだった」ということで、子どもの頃から大人になっても、動物になりきって行動を真似ることで、身体的特徴を掴んで正確に描くことができた、ということです。
『しっぽのはたらき』のキツネを描くまでは、すごいですね。

 

『どうぶつのおかあさん』という絵本に、ライオンのおかあさんが出てきます。

この絵を見て旭山動物園の元園長・小菅正夫氏が感心されたそうです。

専門家でなければ見ることができない後ろ脚の血管がちゃんと描かれている、ということです。

 

動物の専門家から血管や毛並みが正確だと絶賛された絵が、赤ちゃん絵本の中にあるってすごいですよね。

 

 

どうぶつのおかあさん (幼児絵本シリーズ)

 

『エルマーのぼうけん』シリーズの地図が画風を真似て描かれたというお話は驚きでした。

昔はアルファベットを簡単に差し替えることが難しく、福音館書店の社員であった正幸氏が全部を描き直したそうです。

エルマーのぼうけんセット (世界傑作童話シリーズ)

 

『かもさんおとおり』の地図も同様に正幸氏が描き直したそうです。

 

かもさんおとおり (世界傑作絵本シリーズ)

 

正幸氏は、ロシアの動物文学者ビアンキの『くちばし』という作品で絵本デビューしました。

 

 

くちばし どれが一番りっぱ? (福音館の科学シリーズ)

『くちばし』は、『てぶくろ』や『マーシャとくま』で有名なラチョフも絵本にしているそうです。

このお話に登場するヒタキという鳥は、オスが派手でメスは地味な鳥だそうです。

ラチョフの絵本ではオスを描いているそうですが、文章を読むと女性言葉で話している、ということで正幸氏はメスのヒタキを描きました。

そのほかにも、北方系の蝶など地域に忠実な絵本にしたそうです。

 

『てぶくろ』

てぶくろ (世界傑作絵本シリーズ)

 

『マーシャとくま』

マーシャとくま (世界傑作絵本シリーズ)

 

竜太氏のお話の一端が伺える、正幸氏ゆかりの方々の文章が読める本もご紹介いただきました。

 

『ヤブさん-動物画に生きた六十年』は、ゆかりの方々が、正幸氏の人柄や動物画家になるまでのエピソードを記した追悼集。

『拝啓、薮内正幸様』は、雲上の正幸氏に宛てた36人からの手紙。

鳥や動物の挿絵が満載なのも嬉しい一冊です。

 

この二冊は美術館限定本なので、美術館に行くか、美術館サイトからしか購入できません。

 

https://yabuuchi-art.jp/

 

 

薮内正幸動物原画展

原画展では、『しっぽのはたらき』が全点展示され、絵本とはまったく違う美しい色が楽しめたほか、原画とは違った切り取り方で表現された絵本の面白さも味わえました。

ガンバシリーズでは、『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』の表紙3種類だけでなく、挿絵と、今では絶版で見られない牧新社版のカラー口絵まで展示されました。
『グリックの冒険』『ガンバとカワウソの冒険』も表紙と挿絵を見ることができました。

ガンバの冒険シリーズ 美装ケースセット (岩波少年文庫)

そのほか、読み聞かせに使った4冊のテーマ絵本の表紙原画、オオルリ、フクロウなど、全部で27点もの原画を見ることができました。

一日だけでは本当にもったいない原画展でした。