2017年10月1日(日)
第53回キッズ・ブック・スペース特別絵本講座【ピーターラビットと仲間達】を開催しました。
特別講師・北野佐久子先生をお迎えし、スライドでハーブ、食べ物、生活道具、風景などの写真や貴重な資料と絵本の場面を比較しながら、ポターの生涯やお話に隠された意味を解説していただきました。
日本語の文章だけではわからない内容は、原文の言葉と意味を説明し、実際の画像を見せていただくことにより、ピーターラビットの物語への興味がより広がりました。
作者のビアトリクス・ポターは、実際にあるものしか描けない、と語っています。そのため、絵本の中にはポターが愛した風景、大切にしていた家や家具、食器などが描かれています。
その絵本の場面と実際の写真との比較も楽しいものでした。
ハーブ/植物
『ピーターラビットのおはなし』で、ピーターはお母さんから「かみつれ」の煎じ薬を飲まされます。これはカモマイルのことで、「大地のりんご」というギリシャ語が語源と言われるリンゴの香りがするハーブです。
今ではハーブティーの代表のようなカモマイルですが、かつてこのようにベンチに植えたこともあるそうです。
花言葉が「逆境におけるエネルギー」ということで、とても丈夫で、上に座っても再び立ち上がり、ほのかにリンゴの香りがしたそうです。
『ベンジャミンバニーのおはなし』で、ピーターは母子家庭であることがわかり、お母さんは、ローズマリーティーやラベンダーのウサギタバコを売って生計をたてています。
“Uncle Remus”
『リーマスじいやの物語』
ポターの愛読書だった昔話。
ここに、ウサギタバコという言葉が出てくるそうで、ピーターのお母さんがラベンダーをウサギタバコにしたというのはこの本が原典のようです。
『あひるのジマイマのおはなし』には、フォックスグローブ、セージ、タイム、ミントが出てきます。
キツネの企みを知らないジマイマは、アヒルの丸焼きに使うセージ、タイム、ミントをせっせと集めます。
フォックスグローブには、「キツネが足にはめると音を立てずに獲物をしとめることができる」という言い伝えがあるそうです。
『妖精のキャラバン』は、ポター唯一の長編作品です。
ルーというハーブが出てきますが、日本では、猫除け草として売られているそうです。
原文ではルーの説明に、ジェラードという言葉が出てきます。『ジェラードのハーバル』というハーブ事典のことで、ポターのハーブの知識の根源となった本です。
『キツネどんのおはなし』は、ピーターの妹フロプシーと従兄弟のベンジャミンが結婚していて、その子どもがアナグマ・トミーにさらわれるお話です。
その時、ブルーベル(別名ブルー・ヒヤシンス)が描かれていて、イギリス人には、絵を見て季節が春だとわかるそうです。
ベンジャミンのお父さんがアナグマ・トミーにすすめるサクラソウ酒(カウスリップ・ワイン)も、春らしいものです。
『セシリ・パセリのわらべうた』には、カウスリップ・ワインを作っている場面が出てきます。
『まちねずみジョニーのおはなし』で、いなかねずみのチミーが用意するのが、ハーブ・プディングです。
ビストートやネトルなど、浄化作用のあるハーブを使ったお菓子です。
食べ物
『こねこのトムのおはなし』でおかあさんがこねこ達を外に送り出す時に持っているマフィン・フォークは、『セシリ・パセリのわらべうた』でねこさんがパンを焼いている場面にも出てくるもので、イギリスの作品にはよく登場するようです。
マフィン・フォークが登場する作品には、『パンやのくまさん』や『ハリーポッターと賢者の石』もあります。
その場面で焼いているのが、クランペットという穴のあいたパンケーキです。
『ひげのサムエルのおはなし』で、こねこのトムは、ネズミのサムエル夫婦にネコ巻団子にされそうになります。
ネコ巻団子とは、ローリーポーリープディングというお菓子です。
ローリーポーリープディングは、元はシャツの袖を使って作った細長いお菓子です。
イギリスのプディングには、バッグプディング、クリスマスプディングなど、様々な種類があるそうす。
『パイがふたつあったおはなし』に出てくるパイは、パイディッシュという陶器に、肉の煮込みやリンゴなどの果物を入れてパイ生地でおおったパイです。
中身が見えない、ということから生まれたお話です。
『「ジンジャーとピクルズや」のおはなし』に出てくる菓子パンとは、シード・ウィッグというお菓子。
湖水地方では、クリスマスに食べたそうです。
取り上げた作品
下記の本の場面が取り上げられました。
『ピーターラビットのおはなし』
『ベンジャミンバニーのおはなし』
『こねこのトムのおはなし』
『ひげのサムエルのおはなし』
『まちねずみジョニーのおはなし』
『あひるのジマイマのおはなし』
『「ジンジャーとピクルズや」のおはなし』
『キツネどんのおはなし』
『パイがふたつあったおはなし』
『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』
『セシリ・パセリのわらべうた』
ビアトリクス・ポター
石井 桃子 (翻訳)
『妖精のキャラバン』
ビアトリクス・ポター
久野 暁子 (翻訳)
福音館書店
会場には、『ピーターラビットの絵本』24冊とポター唯一の長編作品『妖精のキャラバン』ほか、ポター関連の書籍も展示しました。
北野佐久子先生のご著書も、最新作を含め手に取って見ていただけるようにしました。
講座後に実際に本の場面をご確認いただけるように、それぞれの本を資料と共に展示しました。
これを機会に、もう一度読んでみたいと思っていただけたら嬉しいです。
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