第20回キッズ・ブック・スペース【うまの絵本】を開催しました。
親子の時間では、十二支やうまの絵本を読んだ後、♪うまはとしとし♪というわらべうたで遊びました。
お母さんの脚を馬に見立てて子どもを乗せ、最後に脚を開いて子どもが尻餅をつく、という単純な遊びですが、案外大きなお兄ちゃん達にも楽しんでもらえました。
その後、子ども達はお母さんの膝にすわったまま、テーマ絵本の読み聞かせで終了。
お兄ちゃん達は、普段下の子に遠慮してお母さんに抱っこされる機会も減っていると思うので、嬉しい時間を過ごせたようです。
子どもの時間の《作って遊ぼう!》は、『ゆらゆらこうま』の制作。
大人の時間では、テーマ絵本の『スーホの白い馬』を中心に、モンゴル 、中国 、朝鮮、ベンガル、ロシア 、ドイツ 、イギリス、アメリカ 、中近東など、日本を含め各地の馬の絵本をご紹介しました。
テーマ絵本
「しまうまのしゃっくり」(徳間書店)
デーヴィッド・マッキー/矢川 澄子 (翻訳)
読み聞かせ絵本
「十二支のお節料理」(BL出版)
川端 誠
「十二支のはやくちことばえほん」(教育画劇)
高畠 純
「こうま」(福音館書店)
小野寺悦子 /たしろちさと
紹介絵本《モンゴルと世界のうまの絵本》
『モンゴルの黒い髪』バーサンスレン・ボロルマー /長野 ヒデ子 (翻訳) 〈モンゴル〉
『この世でいちばんすばらしい馬』チェン・ジャンホン/平岡 敦 (翻訳) (中国)
『天馬とにじのばち 』蔡 峻/ 梁 裕子(朝鮮)
『たまごからうま』酒井 公子 /織茂 恭子(ベンガル地方)
『シーフカ・ブールカまほうの馬』M. ブラートフ/ B. ディオードロフ/松谷 さやか (翻訳) (ロシア)
シーフカ・ブールカまほうの馬 (世界傑作絵本シリーズ―ロシアの絵本)
『しあわせハンス―グリム童話』グリム/フェリクス・ホフマン/せた ていじ (翻訳) (ドイツ)
しあわせハンス―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
『はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし 』
ジョン バーニンガム/神宮 輝夫 (翻訳) (イギリス)
『名馬キャリコ 』バージニア・リー・バートン/ せた ていじ (翻訳) (アメリカ)
『ルシールはうま 』アーノルド・ローベル/岸田 衿子 (翻訳) (アメリカ)
『ものいう馬』
中近東の昔話/ウイリー・ポガニー/ヴィラディミール・タマリ/こだま ともこ (翻訳)(トルコ・アラブ)
わらべうた・遊び
♪うまはとしとし♪
うまは としとし ないてもつよい
うまは つよいから のりてさんも つよい
《遊び方》
おかあさんが両足を閉じて伸ばした上に、子どもがまたがります。
歌いながら膝を上下して、子どもは馬に乗っている気分。
最後におかあさんが両足を開くと、子どもは床に尻もち。
たったこれだけのことなのに、子ども達はキャッキャと大喜び。
普段あまり抱っこされなくなったお兄ちゃんたちが、特に嬉しそう。
小学生になっても、おかあさんにくっついて遊んでもらうのは嬉しいんですね。
親子の時間
お正月は終わったけど、みんなと会うのは今年初めてなので、あけましておめでとう!
クリスマスには、クリスマスツリーとかリースを飾ったよね?
お正月には、どんなことをしたかな?
お正月のお飾りの「鏡餅」「しめ飾り」「門松」「輪飾り」
おせち料理の「栗きんとん」「伊達巻」「田作り」
みんなよく知っていました。
どんぐり型、お相撲さん型、星がついたコマなどいろいろなコマも紹介して回しました。
「かわいい~」
今回はもうすぐ小学生の女の子が多かったので、「かわいい」という女の子っぽい声が多かったようです。
『十二支のお節料理』の表紙には十二支の絵がありました。
みんな「ね、うし、とら・・・」と十二支が全部言えるので、びっくりしました。
十二支のお人形が並んだけど、みんな自分が何年だか知ってるかな?
「いぬ年」
「ねずみ年」
「いのしし年」
「うし年」
「ねずみ年」
「うさぎ年」
みんな良く知ってるね。
これから大きくなって小学校6年生になると、また今言った自分の年が来るんだよ。
今度は、『十二支のはやくちことばえほん 』
早口言葉って知ってる?
「知ってる!」
「早く言うの」
そう、言いにくいけど早く言わなきゃいけない言葉だね。
みんなも知ってる早口言葉も出てくるかな。
『こうま』
おうまは生まれてすぐに立つんだね。
みんなが生まれた時は、すぐに立てたかな?
「寝てた」
「抱っこしてた」
「ハイハイとか」
そうだよね。みんなは抱っこしてもらったり、ハイハイしてたよね。
『ぱかぽこはしろ! 』
ネコも、イヌも、ブタも、みんなウマに乗ってたね。
「おうまさんに乗りたい~」
先生がウマになります。
「え?みんな乗っていいの?」
それは無理。
先生に乗るのはモンちゃんです。
みんなはおかあさんのウマに乗ってもらいます。
お兄ちゃんは、最初クマちゃんを乗せてウマになってね。
一人は、スタッフのお姉さんがウマになってくれるよ。
♪うまはとしとし♪
うまは としとし ないてもつよい
うまは つよいから のりてさんも つよい
最後は足を開いて、ドスン!
みんな想像以上に大喜び。
今度は、妹と交代して、お兄ちゃん達がおかあさんに乗りました。
お兄ちゃんたちは、おかあさんのウマに乗るだけで幸せそう。
ドスン!としてもらって、妹達以上に喜んでいました。
いつも小さい妹や弟におかあさんを取られているお兄ちゃんやお姉ちゃんにこそ、こういう遊びの時間が必要なんですね。
最後のご本『しまうまのしゃっくり』は、そのままおかあさんの膝の上で聞きました。
学校に上がると特にそうですが、入学前でも、だんだん大きくなると抱っこの時間が減ってきます。
子どもも、恥ずかしくなってきたり、弟や妹がいると遠慮したりします。
親も、忙しくてゆっくり子どもの相手をする時間がなくなり、大きいからもういいかな、と思ってしまいます。
読み聞かせと同じで、10歳位まで、本当に子どもが嫌がるまでは、時々抱っこしたり、スキンシップしてあげると良いんだろうな、と実感しました。
子どもの時間
《作って遊ぼう!》では、『ゆらゆらこうま』を制作しました。
ハサミを使える大きい子は、自分たちでウマの形を切り抜きます。
ウマを二枚切リ抜いたら、好きな色を塗って、目をつけます。
ウマを貼り付ける台にも、色を塗ったり模様を描きます。
そこで終了の小さい子は、遊びコーナーへ。
遊びコーナーでは、積み木やブロックで遊んだり、さっき先生に見せてもらったコマで遊ぶ子もいます。
最後まで自分でできる子は、ウマを台に貼り付けます。
草原を駆け抜ける、7頭のウマが出来上がりました。
大人の時間 ~スーホから広がる世界の馬の絵本~
大人の時間は、「スーホから広がる世界の馬の絵本」という演題で、いろいろな地域のウマの絵本を、各地の情報と共にご紹介しました。
小さな子には難しい絵本も、大きな子や大人は、読んで楽しんだり感動したりするだけでなく、様々な好奇心を刺激されます。
海外の珍しい風物に触れたら、興味のあるものを調べてみるのも楽しいものです。
『スーホの白い馬』が最初に出たのは、福音館書店の「こどものとも1961年10月号」です。
1967年にハードカバーになったのが、現在おなじみの絵本です。
文章も絵も現在の絵本と同じ人の作品ですが、かなり変わっています。
月刊誌で人気が出ると、ハードカバーで出版されます。
その際、多少の修正はあるのですが、ここまで変わることはあまりありません。
この本は、元の版が失われたために、構成も見直され、新たな場面も増やして描き直され、横長の大型本として出版されました。
このお話は、国語の教科書に取り上げられていることでも多くの人に馴染み深いと思います。
ただ、絵本を元にしていても、教科書には大幅な変更があります。
教科書には特別な権限があり、原作を自由に変更できる特権があるそうです。
絵本は通常、左から読んでいきますが、教科書は縦書で右から読みます。
そのために、右から左に目線を移すので、絵もそれに合わせて変える必要があります。
その時、絵を描いた方が亡くなっていたので、別の方が描き直したようです。
教科書には、国語の指導要領に合わせて勉強するための設問がついています。
読んで面白かった、では終わらず、教科書の意図に合わせた設問を考えなければなりません。
これで、お話そのものがつまらなくなり、お話嫌いになる子も出る気がします。
教科書に取り上げられた絵本は、できれば子どもが教科書に出会う前に読んであげたいですね。
先に教科書に出会ってしまった場合も、もう一度原書の絵本を読んで、純粋に楽しんでほしいと思います。
『スーホの白い馬』は、モンゴル民話です。
モンゴルというと、歴史ではチンギス・カンのモンゴル帝国や、現在では横綱級のお相撲さんがたくさんいることでお馴染みでしょう。
でも、親日家の多いモンゴルと日本人のモンゴルに対する認識には差が大きい気がします。
現在のモンゴル国は、ゴビ砂漠より北の、中国とロシアに挟まれた領域にあります。
地図:http://goo.gl/maps/TbRij
モンゴル民族は、中国の内モンゴル自治区にもモンゴル国内より多い人数が住んでいます。
『スーホの白い馬』は、この内モンゴル自治区の一部に伝わった民話だそうです。
訳者の大塚勇三は、満州で生まれ育った人です。
絵を描いた赤羽末吉は、20代の頃満州に移住し、中国各地を旅したそうです。
本などの資料で調べただけでなく、実際に大陸で生活した体験に基づいて作られた絵本であることが感じられますね。
お話に出てくる馬頭琴は、モンゴルの民族楽器です。
2009年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。
モンゴル語ではモリンホールというそうですが、日本ではこの絵本の影響もあって、中国語の馬頭琴という呼び方で知られています。
ウマの形をした棹と四角い共鳴箱、二本の弦でできていて、チェロのような音色なので、「草原のチェロ」ともいわれるそうです。
共鳴箱は、元々はヤギ、ラクダ、ウマなどの皮革が張られていたそうですが、現在は松や白樺などの木製です。
弦と弓は、ウマのシッポの毛を使うそうです。
モンゴルというと遊牧民族を思い浮かべますが、今では多くの人が牧畜をやめて都市や農村に住んでいるそうです。
『モンゴルの黒い髪』には、昔のモンゴルの生活や民族衣装が描かれています。
ゲルというテントに住み、ヒツジやラクダやウマの世話をし、夜になると馬頭琴に合わせて歌を歌うのどかな生活。
そこに敵が現れ、「邪悪なカラス」を使って侵入しようとします。
男たちは敵を追い払いに戦いに行き、留守を守る女達は、「邪悪なカラス」を追い払うために、カラスの翼よりも大きく結った髪型で立ちはだかり、家族を守ります。
映画『スター・ウォーズ/エピソード1』に出てくる、ナタリー・ポートマン扮するアミダラ女王の髪型は、この絵本の時代のモンゴル女性からデザインされたそうです。
『100年前の写真で見る 世界の民族衣装』では、1920年代のモンゴル女性の写真を見ることができます。
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20130830/363222/
『この世でいちばんすばらしい馬』は中国のお話です。
かわいらしさだけで作られた子どもだましの絵本とはまったく違う絵の美しさに惹かれ、ぜひ紹介したいと思いました。
大人が読んでも充分に楽しめる一冊です。
目を描くと絵から飛び出してしまうほどリアルなウマの絵を描く絵師の話で、中国に実在する絵を元に作られたそうです。
『たまごからうま』は、ベンガル地方の民話です。
ダイナミックな絵で展開する、かぼちゃをウマのタマゴだと信じてしまうグータラ男のお話です。
ベンガル地方は、ベンガル語を話すベンガル人が多く住む、古くから文明が発達した地域です。インドの北東にあり、現在は宗教的対立から、インドとバングラデシュ(旧東パキスタン)に分断されています。
バングラデシュは、ベンガル語で「ベンガル人の国」という意味です。
「たまごからうま」は、「絶対に起こりそうもない」という意味のことわざになっているそうです。
『シーフカ・ブールカまほうの馬』は、ロシア民話です。
「イワンのばか」と呼ばれる末息子が、畑を荒らす魔法の馬、シーフカ・ブールカを捕まえます。
そのウマが「イワンのばか」を立派な若者にし、宮殿のお姫様の婿選びに挑戦させます。
「イワンのばか」というは、トルストイのお話のタイトルにもなっていますが、ロシア民話に度々登場するキャラクターです。
大抵三人兄弟の末っ子で、愚直だけれど純粋な性格で、兄達には馬鹿にされながらも、大抵は最後には幸運を掴むようです。
『しあわせハンス』は、グリム童話です。
わらしべ長者と反対に、7年奉公した報酬の大きな金の塊を、ウマと取り換え、ウシに取り換え、ブタに取り換え、次々と価値に低いものに替えて、最後は何もなくなって幸せ、という欲のないお話です。
グリム童話は、ドイツの言語学者・民話収集家・文学者のグリム兄弟が集めた民話を元にしたお話です。
ドイツだけでなく、フランス出身の人から聞いた話、ラテン語の文献から収集した話を、子どもにも聞かせられるように修正を加えて出版されています。
「白雪姫」「いばら姫」「シンデレラ」「ラプンツェル」など、アニメ映画でも有名なお話がたくさんあります。
『はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし 』は、タイトルからもわかる通り、イギリスの絵本です。
作者のジョン・バーニンガムには、『ガンピーさんのふなあそび 』『クリスマスのおくりもの 』などの作品があります。
『名馬キャリコ 』は、カウボーイとサボテンの表紙の絵からわかるように、アメリカの絵本です。
作者のバージニア・リー・バートンは、『ちいさいおうち』『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』『せいめいのれきし』で知られています。
この作者の特徴は、見返し部分が凝っているところで、『名馬キャリコ 』では、すべての場面がネガフィルムのようにコマ割りで並べられています。
『ルシールはうま 』もアメリカの絵本です。
作者のアーノルド・ローベル の作品には、がまくんとかえるくんの『ふたりはともだち』や昨年友達のテーマで取り上げた『なかなおり』、『どろんここぶた』などがあります。
『天馬とにじのばち 』は、朝鮮のお話です。
朝鮮は、朝鮮半島と周囲の島を含めた地域を表しますが、朝鮮戦争以降、38度腺で分けられた韓国(大韓民国)と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の二国が両方共、朝鮮全体を国土と主張しています。
近くて遠い国で、韓流ブームで親しみを感じる日本人が増えたのは良いことだと思いますが、国同士の関係は複雑です。
絵本で小さい頃から親しむことで、将来的にもっと友好的な関係を築けるようになると良いと思います。
『ものいう馬』は、中近東の昔話集です。
絵本ではありませんが、アラブのお話の一つに『ものいう馬』というウマのお話がありました。
同じ日に生まれた馬と王子は話をすることができ、命をねらわれた王子にウマが知恵を貸して助けてくれます。
アラブ人は、アラビア半島、西アジア、北アフリカなどのアラブ諸国に住み、アラビア語を話す人々です。
アラブ人の中には、馬をとても大切にし、共に生活する民族がいます。
サラブレッドと呼ばれる競馬で勝つために品種改良された馬は、アラブの馬が元になっていることが多いそうです。
日本の絵本もあります。
『うまかたやまんば』は、ウマがウシになった、『うしかたやまんば』と共通の民話です。
やまんばが追いかけてくる様子が怖いお話です。
『ふゆのうま』は、枯れ葉の少女と冬のウマの幻想的なお話です。
作者の手島圭三郎は、北海道出身の版画家で、作品には、たくさんの動物の絵本があります。
今回は、ウマの絵本を巡って、世界各地の文化について勉強してみました。
大人には、こんな絵本の楽しみ方があっても良いのでは?
小さい子には、最初から長いお話や、知らない文化の絵本は難しいでしょう。
でも、少しずつ絵本の幅を広げていくことで、次第に長いお話を聞くこともできるようになります。
おうちでは、毎日少しずつ読んであげることも可能なので、子どもが興味を持った絵本には、ちょっと難しいかな、と思っても、時には挑戦してみてください。
絵本なら、絵の雰囲気で世界の文化を感じることができます。
お話の内容は覚えていなくても、絵から受けた印象は記憶の底に残ります。
小さい頃から世界中の絵本に触れることで、視野を広げ、自分と違う生き方や考え方があることを知り、違うことを否定することなく、共存できる人に育ってほしいと思います。
そんな子ども達がいつか、国同士、民族同士の争いを減らしてくれる気がします。
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