2013年9月7日(土)
第15回キッズ・ブック・スペース【色と音の絵本】を開催しました。
2歳~5歳の子ども達とお母さんがご参加くださいました。
テーマは【色と音の絵本】
オノマトペ(擬音語・擬態語)だけの絵本には、きれいな色使いの絵が多く、つい手に取りたくなります。
いざ読むとなると、オノマトペや同じ文字だけがずっと続き、どう扱って良いか困りますね。
それを見事に読み聞かせてもらって、今まで敬遠していた絵本を見直すことができました。
■親子の時間■
♪はじまるよ♪の歌が始まると、初めて参加してくれた子ども達も、ちゃんと手を動かして歌ってくれました。
2歳の女の子達も、お母さんから離れて参加できるようになり、上手に手を動かしていました。
お昼ご飯食べてきた?
「食べてきたよ!」
「お寿司食べた!」
お寿司食べてきたの?
ぶたさんが何か食べたんだって。
ぶたさんのお腹に色ついてるね。
何食べたのかな?お寿司かな?
「紫色のブドウだよ」
どうかな~
『なにをたべてきたの? 』
しろぶたくんがどこかに急いでいます。
「そんなにいそいでどこへいくの?」
「なにかをたべにいくところ」
リンゴ、レモン、メロン、ブドウを食べて、キレイな色になったしろぶたくん。
最後に石けんを食べて、もっとキレイになれるかと思ったら・・・
合ってたね。紫はブドウだったね。
緑は何だっけ?
「メロン!」
黄色は?
「レモン」
赤は、イチゴだっけ?
「リンゴだよ!」
あ、最初に大きなリンゴがあったね。
(棒に何か赤いものがついていて、いろんな動きをします)
ツンツン
ツンツン
ツー、ツンツン
ツンツン、ツー、ツンツン
「ウサギ?」
ウサギ?ウサギの耳みたいなのがあるね。
目もないけど、何に見える?
「カエルかな?」
カエルみたいにも見えるね。
何だかわからないね。
ここに、こんなチョキチョキってあったら?
「カニ?」
そう。カニって横に足があるのに、下についてて、ウサギさんみたいだね。
ツー、ピッピ!
ツー、ピッピ!
『カニ ツンツン 』
カニ ツンツン ビイ ツンツン
カニ チャララ ビイ チャララ
ビイヒャラ ピイパッパ
ピカブー ピリピリピリ
イーニ ミーニ ムー
・・・
作者の金関 寿夫氏は、アメリカの先住民や現代の詩を専門に研究する英文学者です。
『カニ ツンツン 』は、作者の創作した言葉と、アイヌ語・英語・イタリア語や、人名・地名、インディアンの部族名など、すでに存在する言葉を組み合わせて作られています。
「カニ ツンツン ビイ ツンツン ツンツン ツンツン
カニ チャララ ビイ チャララ チャララ チャララ」
は、アイヌの人に聞こえる鳥のさえずり声。
「モチ チイテ ヤオ テバ ニゲロ」
はアイヌの言葉で「モチついてニャオと鳴いたら逃げろ」
ほとんどが意味不明の言葉だらけで、ストーリーもない絵本をどう読むのかと思えば、画面や言葉の音に合わせて声の調子を変えながら、変化に富んだ読み聞かせをしてくれました。
画面には、小さい赤いカニ?がどこかしらに「ツンツン」と存在します。
時々、棒についたカニを取り出して、そこに注意を向けたりします。
子ども達は「変なの~」「なんだ、こりゃあ」と言いながらも、フフフ、ケラケラ、クスクスなどとページごとに笑って見ていました。
なんだ、こりゃあ。ツンツンだって!
「おっかしい~」
「変なの~」
変だよね~
じゃあ、みんなの所にも、ツー ツンツン。
ツー ツンツン。
今度は、指の体操。
両手を握って、人差し指を片方ずつ上に突き出します。
今度は、人差し指を片方ずつ横に突き出します。
これを交互に繰り返します。
♪ミミズの たいそう
1、2、3、4
1、2、3、4♪
先生の顔じゃなくて、手を見ててよ!
じゃあ、今度はゆっくりやってみようか。
上! 反対の指を上!
横! 反対の指を横!
上! 反対の指を上!
横! 反対の指を横!
ちょっと待って!
後ろのママ達を見て。
ママ達がちゃんとできてるか見てみようか。
誰のママがちゃんとできてた?
「ダメ~」
「みんなダメ~」
みんなダメ~、ブッブーだったね。
じゃあ、みんなだけ小さくなって練習しよう。
♪ミミズの たいそう
1、2、3、4
1、2、3、4♪
ちょっと難しいね。
じゃあ、今度は両方の指を一緒に出してみようか。
一緒に上!一緒に横!
ぴっ!ぴっ!
じゃ、みんなは簡単な方、ママ達は難しい方でやってみよう!
♪ミミズの たいそう
1、2、3、4
5、6、7、8♪
ママ達は、みんなまだできてないねえ。
じゃあ、おうちで練習して、夜までにできてるか見てあげてね。
ビービッビ!ビッビ!
ビビビ!ビーッビ!
ビービッビ!ビビビ!
ビー!ビーッビ!
(今度は別の本が出てきました)
「なんだ こりゃ」
また、なんだ こりゃ だねえ。
ミミズのたいそう、みたいなニョロニョロがあるね。
これも、なんだかねー
「あやしい!」
あやしいねえ。
ビビビビ ビビビビ
ビビビビ ビ ビビビ・・・
・・ビ
おしまい。
「ビビビビ」
「変なの」
先生、ビしか言わなかったね。
ビだけじゃわからないから、今度はもう少しお話があるのにしようかな。
「なんだ?」
「これ 変」
「へーんなの」
なんだ こりゃだね。
「これが、どれよりも一番変!」
えー『ビビビ』のが変じゃなかった?
「これのが変!」
そっかー。
じゃあ、今度はちゃんとお話が書いてある本にしよう。
『くまさん くまさん なに みてるの? 』
くまさん くまさん なに みてるの? (エリック・カールの絵本)
茶色いくまさんは、赤い鳥を見て
赤い鳥さんは、黄色いアヒルを見て
様々な色の動物が見ている先には・・・
「最後は、いいお話だった」
いいお話だったね。
最後のはわかったよね。
ぱぺ?ぽぴ?って聞かれても、わかんないもんね。
■子どもの時間■
作って遊ぼうは『ぺったん!合わせたらどんな模様?』
二つに折った紙の半分だけに、いろいろな色の絵の具で模様をつけます。
絵の具が乾かないうち、半分に折って、ギューッと押さえつけます。
反対側にも色が移って、同じような模様ができました。
みんなどんなチョウチョができるでしょう?
最初は、小さい白い紙で練習します。
交代で、一色ずつ順番に塗ってね。
上手にできたかな?
チョウチョ型の色画用紙と白い小さな紙の二種類に模様ができました。
心理学のロールシャッハテストのようですが、デカルコマニーという造形の手法を使ってみました。
お姉さん先生が、幼児教育の授業で習ってきたそうです。
この模様を音にすると、どんな音になるでしょう?
おうちに帰って、お父さんやお母さんに音や言葉を書いてもらうのが宿題です。
素敵な音が加わったら、自分だけのオノマトペ絵本が出来上がります。
■大人の時間■
今回の演題は、《チョット難しいけど、楽しい絵本》
色や音が楽しい絵本は、大人にとってはどう読んであげれば良いかわからず、敬遠してしまいがちです。
そんな絵本の読み方や扱い方のコツを教わりました。
何冊かお話の絵本の合間に、このような音だけの絵本を入れるのは趣向が変わって面白いのですが、今回のようにこの手の絵本だけを読むのは、読み手も聞き手もちょっとツライものがありますね。
どう間を持たせて絵本をつなげて読み聞かせるかは、かなりのチャレンジでもありました。
図書館などでこのような絵本を借りてきて「読んで」と言われても、大人は困りますよね。
起承転結はないし、オチもないし、意味わからないし、どこが面白いかわからないし、読み方もわかりにくいですね。
『カニ ツンツン 』は、最初は月刊誌「こどものとも」で年長組で配布された本ですが、年少組で読み聞かせをして、意外とはまった絵本です。
お話の絵本に慣れてしまった子には、「何だこりゃ?」となってしまう本も、三歳児くらいだと一緒に「ツンツン」など声に出してみたり、音に反応して楽しめたようです。
この絵本は、出た当時は「何でこんなわけわからない本を出したんだ?」などという批判もあったようです。
でも、子ども達は幼稚園やおはなし会の読み聞かせではまってしまう子が多く、人気があったため、このようなハードカバーでいつでも購入できるようになりました。
『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』になると、絵も何を意味しているかわからないし、作者の独創性満載の絵本です。
これを読み手が「どこが面白いのかしら」などと疑問を持ってしまうと、聞き手もそっぽを向いてしまいます。
「ぱぱぺ?ぱぷぽぴ!」など調子をつけて、自分も楽しんで読まないと。
音楽的なセンスがある人なら、もっとリズムやメロディをつけて面白く読めるかもしれません。
二度と同じようには読めませんが、それはそれで面白いでしょう。
『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』は、赤松先生が唯一読み方を練習してきた絵本です。
意味のない文字が並んでいるので、ゆっくり読んでも読み間違えるし、つっかえてしまうと面白さが半減するからだそうです。
ちょっとくらい間違えても、構わず調子を崩さず、リズミカルにどんどん読み進むのがコツのようです。
日本語は、オノマトペが大変豊富な言語だと言われます。
世界に広まる漫画の発達と共に、さらにいろいろな音や状態の表現が作り出されています。
国語辞典には入りきらないため、オノマトペだけの辞典まであります。
この辞典を編集した小野正弘氏によるオノマトペの本もあります。
『古事記』から漫画までを例にとって、オノマトペの面白さが解説されていて、日本語の表現の豊かさがわかります。
オノマトペがあるから日本語は楽しい―擬音語・擬態語の豊かな世界 (平凡社新書)
専門書などの硬い本に使われることが少ないため、幼稚な言語と言われることもありますが、日本古来から発達してきたオノマトペは、日本語の表現を豊かにしてくれています。
松居直氏(福音館書店相談役)は、『絵本の時代に』で、子どもの言語体験におけるオノマトペの意味について書いています。
“こうした音声の豊かさを伴った言葉が、言葉に対する乳幼児の耳の感覚や語感を養うのではないだろうか“
『もこもこもこ』は、『カニ ツンツン 』の絵を描いた元永 定正氏と詩人の谷川 俊太郎氏の作品です。
もこ もこもこ
にょき
ぱく・・・
この絵本は、ある程度言葉と絵が連動していて、大人でも楽しめます。
谷川俊太朗氏はオノマトペについて・・・
“オノマトペによって幼い頃から物の質感や動き、鳥獣の鳴き声、人間の心理などに対する繊細な感覚を育てることは、大切なことだと思う“
元永 定正氏には、『もこもこもこ』や『カニ ツンツン 』以外にも、『ころ ころ ころ』、『がちゃがちゃ どんどん 』、『もけら もけら 』、『おおきい ちいさい 』など、いろいろなオノマトペ絵本があります。
元永 定正氏は、生前のインタビューで・・・
“最初の頃、抽象画の絵本は、親からの抗議の手紙が多かった。「変な本を出すな」って。
ある図書館の館長が、新聞で「図書館で購入しようかどうか迷った」と書いてあるのを見て、「やった!」と思った。
新しいものは変なもの。不安も生む。だから抵抗が起きる。
非難があったということは、動きがあったということ。
新しい時間の動きが生まれると、またそこからいろいろなことが起きてくる。
それが面白い“
今回の色のテーマでは、一つの色ではなく、いろいろな色が入った絵本を選びました。
『じぶんだけのいろ』
オウムや金魚やゾウやブタはそれぞれに自分の色を持っている。
カメレオンだけは別。行く先々で色が変わる。
葉っぱの上でずっと暮したら、ずっと緑ででいられると思ったら・・・
作者のレオ・レオニは、国語の教科書の『スイミー』でお馴染みですね。
今年の6/22(土)~8/4(日)に、渋谷で『レオ・レオニ 絵本のしごと』という原画展をやっていました。
子どもから大人まで幅広い人気があるので、ものすごい行列でした。
水彩、油彩、版画、手でちぎった切り絵のコラージュ、モザイクなど、作品ごとに様々な手法で表現されていることに驚かされました。
『じぶんだけのいろ』のカメレオンの彫刻までありました。
レオ・レオニの作品は、色や絵がキレイでお話も難しくはないので、子どもは素直に楽しむのですが、大人が読むといろいろと考えさせられます。
人によって捉え方が変わったりもします。
『じぶんだけのいろ』では、誰にでも良い人に見られたい八方美人や、他人の意見に左右されやすい人などが、身につまされたりするかもしれません。
最後に出会ったカメレオンが男女だとすると、出会った時は向かい合っているのに、同じ方向を見て同じ色に染まっているのは、結婚みたい、などと思えたりもします。
『あおくんときいろちゃん』
あおくんには、色々な色のお友達がたくさんいます。
でも、一番仲良しなのは、きいろちゃん。
あおくんは、きいろちゃんと遊びたくなって、きいろちゃんを探し回ります。
ばったり出会ったあおくんときいろちゃんは、嬉しくて嬉しくて混ざり合って、緑になりました・・・
『フレデリック』
冬の準備で忙しい野ねずみ達は、昼も夜も働いていました。
けれど、フレデリックだけは別。
じっと座って、お日様の光や、色や、言葉を集めてる、と言います。
やがで冬になると・・・
『ペツェッティーノ』
小さいペツェッティーノは、自分は取るに足りない誰かの部分品なんだと思っていました。
走るやつ、強いやつ、泳ぐやつ、山に登るやつ、飛んでるやつに聞きます。
「僕はあなたの部分品ですか?」
みんな、部分品が足りなくてこんなことができるか?と答えます・・・
『みどりのしっぽのねずみ』
森の奥の安全で快適な片隅に、野ねずみ達が平和に暮らしていました。
あるとき町ねずみから、音楽や踊りやパレードや紙吹雪や仮面の話を聞くと、みんな夢中になりました。
自分たちも、歌ったり踊ったりした後、それぞれのねずみが恐ろしい仮面をかぶって出てくると・・・
子どもから大人まで、それぞれの時期にそれぞれの感じ方ができる絵本です。
小さな子には、かなり幅広い絵本を読んでいない難しいものもあります。
ぜひ、小学生以上になっても読んであげてください。
『いろいろいろ』
しんしん しんしん 白い雪
青い魚、青い海で、青い夢見る
あまい桃色、ひろがって ふんわり・・・
色を覚えさせようという意図の色の絵本とは違って、詩的な文章で、複雑でキレイな色使いの絵本です。
これも、谷川俊太朗氏と元永定正氏の作品です。
絵本というのは、子どもを対象には作られているのですが、小さい子にはちょっと難しいですね。
どちらかというと、中学生くらいの思春期や大人で心が揺れ動いている時に読むと響くかもしれません。
『なつのいなかのおとのほん』
犬のマフィンは、初めて田舎にいくことになりました。
箱に入れられて、列車と船で行きます。
その間、何も見えませんが、いろいろな音が聞こえます。
がたんごとん がたんごとん
ポッポー
いったい何でしょう?・・・
コケコッコー
メエー
ムオー
いったい何でしょう?・・・
今回、オーソドックスではない、一見どう扱って良いかわからない絵本を取り上げてみました。
子どもも、いろいろな色を持って生まれ、時にはどう扱って良いか困ることもあるでしょう。
親とは違う独自の色を持った子どもは、親の思うような色に染めようとすると、濁ったりくすんだりします。
大人は、子どもの持って生まれた色を大切に磨き、輝かせてあげたいですね。
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