〈14〉【七夕の絵本】

2013年7月13日(土)午後2時~4時にキッズ・ブック・スペース【七夕の絵本】を開催しました。

2歳~4歳の子ども達とお母さんがご参加くださいました。

 

七夕伝説の話から昔話の話になり、若いお母さんはもとより、保育者でもよく知らない昔話が多いということがわかりました。

キッズ・ブック・スペースの新しい課題が見つかった、貴重な講座となりました。

 

■親子の時間■

今回は、久しぶりに『ととけっこう よがあけた』で始まりました。

 

ととけっこう よがあけた (わらべうたえほん)

 

男の子の中には、茶々を入れながら歌う子もいましたが、先生は平気です。

後ろの方にいて、久しぶりで照れているようなので、声を掛けながら読み進むうちに、何となく参加してきました。

先生が袋から何かを取り出そうとすると、後ろにいた子も前に出てきました。

興味津々で先生の手元を見つめます。

 

「わかった。ヒヨコだ!」

どうやったらヒヨコが出てくるかな?

「そりゃ、歌うんでしょう」

何歌うのかな?

「ココけっこう!」

ココけっこう?

ととけっこうでしょう。

じゃあ、歌おうか。

ココけっこう♪

「違うよ」

あ、違ったね。

 

♪ととけっこう よがあけた・・・

 

みんなで歌って、全部のヒヨコを起こしてあげました。

 

♪ととけっこう♪は、レギュラーの子ども達にはお馴染み過ぎて、さすがに飽きるかな、と思いましたが、小道具や話の持っていき方で、いくらでも引き込むことができることがわかりました。

 

この葉っぱ知ってる?

「ささのは」

「たなばた!」

よく知ってるね~

たなばた、飾った?

「飾った。幼稚園で飾ったよね?」

何飾ったの?

「天の川」

 

こんな三角をつなげたのは作った?

「輪飾りを作った」

こんな提灯も作った?

「作ったよ」

作った飾りはどうした?笹に飾った?

「こよりでつけた」

みんな、幼稚園やおうちで七夕の飾りつけをしたようです。

「笹の葉」「天の川」「輪飾り」「こより」など、普段使わないような言葉をよく知っていますね。

 

七夕の時には、彦星と?

「おりひめさま!」

そう、彦星と織姫が、こんなふうに離れてて・・・

「天の川があるから」

そう、天の川で離ればなれになってるんだけど、七夕の日には会えたかな?

雨だと会えないけど、この前の七夕はお天気だったから、きっと会えたね。

 

久しぶり!

元気だった?

一緒に遊びましょう?

たくさんお話しようね!

って仲良くしてたかな。

 

(何故か、照れて転げる男の子達・・・)

 

七夕のお話の後は、七夕の絵本です。

『10ぴきのかえるのたなばたまつり』

10ぴきのかえるのたなばたまつり       (PHPにこにこえほん)

 

10ぴきのかえるが住むひょうたんぬまでは、近くの竹やぶが人間によって切り開かれ、笹が取れません。

願い事の短冊をさげる笹がないと、七夕祭りができません。

そこで10ぴきのかえるは、遠くの“ささささ山のさささらやぶ”まで笹を取りに行きます。

野を越え、岩を登り、さらさらという音に導かれて行った先は・・・残念!小川でした。

そこで、大きなザリガニに追いかけられて・・・

 

あれ、ここ(裏表紙)にいるのは?

「あ~怒ってる!」

ザリガニが怒ってるね。

またカエルが来たら、食べてやる~って。

 

さっきのカエルさん達もお願い事してたけど、みんなもお願いした?

何てお願いした?

「たくさんあって言えないよ」

教えてよ。

ご飯がたくさん食べられますように?

速く走れますようにとか?

「そんなんじゃないよ」

 

じゃあ、絵本ではどんなお願い事してるかな。

 

『もうおねしょしません』

もうおねしょしません (くりのきえんのおともだち 1)

 

裏山に星の子どもが落ちた時、ねずみのちゅうこはおねしょをしました。

翌日は、みんなで七夕の準備をしましたが、ちゅうこは元気がありません。

短冊に願い事も書かないし、笹に飾りつけもしませんでした。

その晩、ちゅうこの部屋に星の子どもがやってきました。

星の子どもも、おねしょをして空から落ちてしまったのです。

ちゅうこは、星の子どもに「空まで連れてって」とお願いされますが・・・

 

2歳の女の子は、ちゅうこが空高く登って星のお母さんに出会う場面になると、トコトコ近づいて行って、覗き込んでいました。

 

暑くなってきて、みんなプールに入ったかな?

「入った」

プールより広~くて泳げる所知ってる?

「海!」

海には何がいる?

「カメ!」

うーん、カメもいるけど、魚がいるよね。

みんな魚になれるかな。

 

♪さかながはねた♪

 

さかながはねた あたまにくっついた ぼうし

さかながはねた おくちにくっついた マスク

さかながはねた おしりにくっついた しっぽ

さかながはねた おなかにくっついた おへそ

 

2歳の女の子も、お母さんの隣に座って、ちゃんと魚になっていました。

 

ちょっと前までハイハイをしていた子が、自由に歩き回って、椅子の上り下りも一人でできて、先生の言う通りに体を動かしていました。

スタッフ一同、毎回その成長ぶりに感激しています。

 

 

海には他に何がいるかな?

ペンギンもいるよね。

「ハワイにもいたよ」

え?ハワイに?水族館?じゃなくてホテルにいるの?

知らなかった!

じゃあ、どこのホテルか教えてもらって、今度みんなで行こうか。

 

絵本は、ハワイではなく、氷の島に住むペンギンのお話です。

 

『ペンタとうみ』

 

友達と一緒に海に来たペンタは、まだ泳いだことがありません。

海に飛び込んだ友達に呼ばれても、怖くてなかなか飛び込めません。

氷の上から魚が見えました。

「おいしそう」と覗き込んだ途端・・・

 

今度は、ちっちゃな絵本です。
『いちにのさんぽ』

 

いちにのさんぽ (ぽかぽかえほん)

 

いちに、いちに。いちにのさんぽ。

さんぽ、ぽくぽく、いいきもち。

さんぽ、あるいて、こんにちは。

 

アリやイヌやクマと、どんどん大きな動物に出会い、一緒に散歩に出かけます。

恐竜の次に出会ったのは・・・

 

■子どもの時間■

今回の制作は“織姫と彦星は会えるかな?”

 

最初に、それぞれ好きな色で、織姫と彦星に色を付けます。

中には、戦隊ヒーローのレッドとピンクにしている子も。

 

片面に織姫を貼ります。

裏に彦星を貼ります。

 

両手で棒をはさんで回します。

離れ離れの織姫と彦星は、一緒にいるように見えるかな?

 

■大人の時間■

大人講座は、“大人になった今、短冊に何をお願いしますか?”という演題で、七夕の由来や七夕伝説のお話をしながら、お母さん方自身の願い事を伺いました。

 

今回の大人のテーマ絵本は『おこだでませんように』

 

おこだでませんように

 

家でも学校でも、怒られてばかりいる僕。

妹と一緒に遊んでやっても、妹を泣かしたとか宿題をしてないと言って怒られる。

学校で仲間はずれにされたのでケンカをすると、僕だけが怒られる。

 

七夕の短冊を書く時、一番のお願いを一生懸命考えて「おこだでませんように」と書いた。

一番書くのが遅かったので、また先生に怒られるだろうなと思っていると・・・

 

この本は、読んでみて初めて七夕の本だと知りました。

今年は、本屋さんで平積みにされていて、話題になっているようです。

どちらかというと、親や先生など、大人の方が読んで胸にチクンとくる絵本です。

 

七夕は、子どもが小学校低学年の頃までしかやらない家庭が多いですね。

ハロウィンやクリスマスがイベントとして盛り上がってきているのに、ひな祭りや端午の節句や七夕などの、日本の伝統行事が受け継がれていかないのは残念です。

大人でも、七夕の本来の意味を知らず、織姫、彦星、天の川というキーワードでしかイメージできなかったりします。

 

ちょっと古い本ですが、スタンダードな七夕絵本があります。

 

『たなばた』(福音館書店)

たなばた (こどものとも傑作集)

 

天の川の西側の人間世界に、牛飼いが年取った牛と暮らしていました。

その牛が「天の川に水浴びに来ている天女の着物を隠しなさい」と言います。

言われるままに、天女達の中の織姫の着物を隠してしまいます。

仕方なく牛飼いの妻になった織姫は、男の子と女の子を産んで幸せに暮らしていました。

 

ところが、そのことを知った王母様は怒り、織姫を連れ戻しに来ます。

織姫は、牛飼いや子ども達と泣く泣く別れて天に帰りますが・・・

 

『たなばた』(フレーベル館)

 

 

 

 

たなばた (にほんむかしばなし 5)

 

昔、牛飼いの若者が、川のほとりで美しい着物を見つけます。

思わず、小さくたたんで懐に隠してしまいます。

織姫という天女が水から上がってきて、「それがないと天に帰れないので返して」と言います。

妻になれば返す、と言われ、しぶしぶ妻になり、二人の子どもが生まれます。

 

それでも天に帰りたいと思っていた織姫は、着物を探し続けます。

子どもの歌がヒントになり、とうとう着物を見つけると、織姫は子どもを連れて天に帰ります。

牛飼いには、天に登れる方法を書き残していきます。

わらじを千足と言われたのに、待ちきれずに999足を埋め、夕顔を植え、伸びたつるを伝って天に登ろうとしますが・・

 

このような七夕伝説は、地味ですし、お話が長いので、年長以上でないと難しいですね。

幼稚園で七夕の時期に読む絵本は、親子の時間で読んだような『もうおねしょしません』や『10ぴきのかえるのたなばたまつり』、または『ほしにおねがい』のような、七夕に関係するお話が多くなっています。

『ほしにおねがい』

ほしにおねがい―たなばたのおはなし (行事のえほん)

 

まだよく光ることができない小さい星の子が、空から降りてきました。

七夕の今夜、誰かのお願いを一つ叶えてあげないと、一人前になれません。

「猫のみーやが帰ってきますように」という短冊を見つけ、その願いを叶えることに決めました。

 

公園に集まる猫達に聞いたり、流れる川に浮かぶ星達に聞いたり、犬に吠えられたりしながら、星の子はみーやを探し回りますが・・・

 

『天人にょうぼう』(佼成出版社)や『天人女房』(童話館出版)のような七夕伝説の絵本は、お話も長く、絵も地味で子どもには内容も難しいでしょう。

小学生くらいになって読み聞かせると良いのですが、小学校ではなかなか時間が取れないようです。

ぜひ、小学生くらいになった、おうちで読んであげてほしいと思います。

 

『天人にょうぼう』(佼成出版社)

天人にょうぼう (行事むかしむかし)

 

一人の天女が、虹色の羽衣を松の木にかけ、水浴びをしていました。

通りかかった若い木こりは、羽衣の美しさに心を奪われ、懐に入れて仕事に行ってしまいます。

仕事の帰り道、羽衣をなくして泣いている天女に出会います。

羽衣は風に飛ばされたのだろうと嘘をつき、家に連れて帰ります。

 

やがて木こりのお嫁さんになった天女には二人の子どもが生まれました。

三年たったある日、天女は木こりが天井裏に隠した羽衣を見つけます。

天女は置き手紙をして、二人の子どもと一緒に天に帰ります。

木こりは、手紙を読んで、一番大事なものを埋めて、夕顔の種をまきました・・・

 

『天人女房』(童話館出版) 

天人女房

 

二人の天女が、羽衣を木にかけて川で水浴びをしていると、牛飼いが通りかかりました。

牛飼いは天女に一目惚れをして、羽衣を一枚隠しました。

一人の天女は羽衣を着て天に帰りますが、一人は帰れず泣き出します。

牛飼いは、羽衣のことは知らないと言い、天女を家に連れて帰ります。

 

二人は夫婦になり、七年後には、二人の子どもが生まれ、幸せに暮らしていました。

上の子が歌っていた子守唄をヒントに、天女は羽衣を見つけ、二人の子どもと一緒に天に帰ります。

 

帰ってきた牛飼いが妻子を失ってふぬけになっていると、隣の人が天に登る方法を教えてくれます。

庭に一番大事なものを埋めると、金竹が生えてきて、七日たったら天まで届くと言われました。

けれど待ちきれずに、六日で登って行くと・・・

 

七夕のお話には、中国からきた織姫と彦星のお話(『たなばたものがたり』など)と、日本古来の伝説である羽衣伝説から発展したお話(『天人女房』など)があります。

若い世代では、羽衣伝説自体聞いたことがないという人も多いでしょう。

子どもは、昔話のような地味な絵本に興味を示すことは少ないでしょう。

大人が読んであげなければ、まったく昔話を知らない子がどんどん増えていきます。

 

『ももたろう』『かにむかし』『かぐやひめ』などは、だいたい話の筋を知っている人も多いでしょう。
『かちかちやま』『いっすんぼうし』などは、知っていても、きちんとした内容は話せないかもしれません。

『ききみみずきん』になると、聞いたことがない、という人が多くなります。


七夕も同じように、織姫、彦星、天の川というキーワードだけで終わってしまうのは、寂しいですね。

まず、お母さん方が興味を持って、手に取ってください。

 

学校の読書の時間には、自由に生徒に読ませるだけではなく、先生が読み聞かせをしてくれると良いと思います。

低学年では絵本、中学年では2~3日で読み終わるお話、高学年では長いお話やシリーズ物などと継続してくれることが理想ですね。

七夕に関しては、短冊にお願い事を書くくらいなら、少し大きくなっても続けられるのではないでしょうか。

サンタさんへのプレゼントのお願いとは違う、ということも教えてあげてください。

そして、親も一緒に自分自身の願い事を書いてみてください。

家族の健康や子どもの将来や美容と健康以外、どんな願い事がありますか?

 

赤松先生は、昨年より小学校の図書室勤務となり、小学生への読み聞かせの機会を増やしています。

担任の先生の理解を得ながら、図書の時間だけでなく給食の時間なども使って、低学年だけでなく、上の学年にも読み聞かせの幅を広げています。

 

七夕伝説は、星のお話だけでなく、羽衣伝説や、お婿さんに難題を課す話など、様々な昔話と関わっていることを知りました。

また、若い世代では、羽衣伝説や昔話そのものを知らない人が増えていることも知りました。

 

七夕の絵本を読み比べるだけでもわかりますが、昔話には似たようなお話が世界中にあり、地域によって少しずつ違っています。

その違いが、地域性や考え方の違いに通じていて、とても興味深いのです。

もっともっとたくさんの昔話を読んで、比較して、楽しさを味わってみたいと思いました。

そして、多くの子ども達が昔話に興味を持ってくれるような企画を練っていきたいものです。