2013年1月19日(土)2時~4時にキッズ・ブック・スペース【お正月の絵本】を開催しました。
お正月の過ごし方は時代と共に変わってきましたが、子ども達が体験したこと、大人が体験してきたことを思い出しながら、お正月の絵本を楽しみました。
今回は、2~3歳の子ども達とお母さんのほか、若手からベテランの幼稚園の先生数人もご参加くださいました。
様々な幼稚園の図書や読み聞かせの状況などを伺いながら、保育者と保護者それぞれの立場で知ってほしい“絵本が持つ力”について伝えることができました。
■親子の時間■
♪はじまるよ♪の歌で始まると、今日は早速テーマ絵本の読み聞かせです。
お正月はちょっと過ぎてしまったけど、どんなことがあったか思い出してみましょう。
玄関のお飾りや門松。
朝ご飯もいつもと違うお節料理。
若い人から飲むお屠蘇。
年賀状にお年玉。
かるたはやったかな?まだ難しいかな?
「ぼく、車のかるた持ってる!」
そう。車のかるたやったんだ。
福笑いは知ってる?
凧揚げや羽根つき。
みんなで初詣に出かけると、たくさんの人とお店。
お賽銭を投げて、今年もいいことがありますように!
一年の始まりの日。いつもと違う新しい気持ち。
だから、あけましておめでとう。
子どもの頃、「今日は“こんにちは”じゃなく“おめでとうございます”と言いなさい」と言われ、不思議でした。
何故おめでたいんだろう、何故お正月だけいつもと違うんだろうと疑問だらけでした。
いつもは放ったらかしの神棚も、年末だけキレイにしてお正月だけ柏手を打っていました。
不信心の家庭に育ったもので、お正月だけ初詣に行ったり特別なのが異様でした。
でも、こんなふうに絵本で読むと、だからか、と納得できます。
だんだんと伝統的なお正月風景は減っていますが、不信心な人でもお正月だけは守ってきたものがあるから、こんなにいろいろな風習が残っているんですね。
お屠蘇の風習は、中国の唐(7世紀)の時代に始まり平安時代に日本に伝わったそうです。
中国ではとっくの昔にすたれた風習が、日本ではずっと続いているのがすごいですね。
最近はあまり見られなくなったものも多いのですが、絵本でお正月を見直していきましょう。
みんなお正月のこと覚えているかな?
こんな雪だるまみたいなお餅知ってる?
鏡餅。おうちに飾ってあったかな?
玄関やいろいろな所にこんなお飾りを飾ったかな?
それから・・・
こんなご飯食べたかな?
かまぼこやお豆、何が好き?
「おばあちゃんちでお節料理食べた」
そう。お節料理だね。
エビやお魚やいろいろあるね。
くるくるカタツムリみたいな卵焼き食べた?伊達巻。
「食べた!」
おいしいよね~
カメさんの袋から出てくるのは何かな?
チューチュー「ネズミ」
モウー「ウシ」
ガオー「ライオン!」残念。ぼくはトラだよ。
ピョンピョン「ウサギ」
これ何に見える?「ワニ」うーんワニにも見えるけどね。リュウでした。
ニョロニョロ「ヘビ」
これは何だ?「おウマ」
メエーメエー「ヒツジ」よくわかったね~
これはなんだ?「おサルさん」
これはわかる?「コケコッコー」そうニワトリだね。
これは何だろう?「シロクマ」シロクマじゃなくって、ワンワン「イヌ」
これ何かな?「ブタ」あーブタさんみたいだけど・・・
「イノシシ!」よくわかったね~
みんなにはちょっと難しいけど、十二支の動物。
今年はヘビ年。ヘビさんの絵のカレンダーとか見たことあるかな。
今年生まれる赤ちゃんはヘビ年なんだよ。
みんなは何年かな?
「ウシ年」「トラ年」「ウマ年」「イヌ年」
大きいお姉さん達には聞いちゃ悪いので、以下省略。
この動物達が出てくるご本があるんだ。
この表紙には誰がいるかな?
「ドラゴン!」
あ、“タツ”や“リュウ”より“ドラゴン”の方がわかるんだね。
ネズミとサルがドラゴンに乗ってるね。
1月1日1時にネズミが餅食べた。いくつ食べた?
2月2日2時にウシがチョコ食べた。いくつ食べた?
3月3日3時にトラがひしもち食べた。いくつ食べた?
12の月の12に日にちの12の時間に、十二支の動物がいくつの食べ物を食べるかな?
『かごめかごめ』のメロディーで歌っても楽しい絵本です。
こんどは、ヘビ年だからヘビの絵本。
木のてっぺんでお昼寝しようと思ったヘビくん。
するする木登りしてたら、
ヒューって風が吹いてきたり、
ザザーって雨が降ってきたり、
チラチラ雪が降ってきたり、
なかなかてっぺんまで登れません。
あきらめて大きな口をあけてあくびをしたら、
どうなったと思う?
最初は落ち着きのなかった子も、
ヘビくんがぷくーっとふくらむのを見て、
心配そうに近づいていきました。
風船みたいにふくらんだヘビくんは、どうなったでしょう?
これな~んだ?ぼくの名前は・・・
「だるま」
そう。当たり。
だるまさんは、転がっても、転がっても、転がっても、起き上がるね。
みんなも、だるまさんになってみよう。
みんな、だるまさんにな~れ。
足を前に出して、横にゴロンゴロンと揺れてみよう。
だ~る~ま~さ~ん~が
こ~ろ~ん~だ!
どてっ!
あれ?先生は転んじゃったけど、みんなは転ばないの?
もう一度、
だ~る~ま~さ~ん~が
こ~ろ~ん~だ!
また転んだのは先生だけ?
みんな安定性良すぎ!
わ~こんなに大きくなっちゃった!
『だ る ま さ ん が』
大きなだるまさんだね。
だるまさんが、さっきのみんなみたいに、
横にゴロッ、ゴロッと転がっています。
みんなも一緒に言ってくれるかな。
「だ~る~ま~さ~ん~が」どてっ。
あれ、さっきの先生みたいに転んじゃった。
「だ~る~ま~さ~ん~が」ぷしゅー。
見てた子も一緒に、ぷしゅーと腹ばいになりました。
「だ~る~ま~さ~ん~が」びろ~ん。
見てた子も、立ち上がって背伸びして、思い切り伸びました。
体を揺らしたり、転がったり、伸び上がったり、だるまさんと一緒に全身で楽しめました。
だるまさんシリーズは、ここ数年の人気絵本ですね。
絵本を選ぶ場合、何十年も売れ続けているロングセラーが無難、とよく言われます。
確かに、長年読まれてきた絵本は、多くの人の心に残る作品です。
でも、新しい絵本にも良いものはたくさんあります。
子どもが喜ぶ視点で、幅広い絵本を取り上げていきたいと思います。
たくさん体を動かしたから、お腹すいちゃったね。
お餅食べようか。
幼稚園でこんなふうなお餅つきしたかな?
先生は、小学校のお兄さん達がペッタン、ペッタンついた柔らかいお餅をもらって、しょうゆときなことあんこをつけて食べたら、すごーくおいしかった!
みんなは何が好きかな?
「しょうゆがおいしかった!」
「きなこ」
おしょうゆのお餅もきなこのお餅も、おいしいよね。
それじゃ、お餅つきしようか。
♪正月さんのもちつきは
トーントーン トッテッタ
トーントーン トッテッタ
トッテッタ トッテッタ
おっこねた、おっこねた、
おっこねおっこね、おっこねた
とっついた、とっついた、
とっついとっつい、とっついた
シャーンシャーン シャンシャンシャン
シャンシャンシャン シャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャン シャンシャンシャン♪
最後は速くて難しいですね。
小さい子は一人で、ずっと上下に手を叩くだけで遊びます。
小学生以上だと、二人で組んで別々の動きで遊べます。
二人が違うリズムで叩く部分があるので、つられないようにするのが難しいところ。
お餅がつけたら、焼いて食べましょう。
何をつける?おしょうゆ?
♪ もちっこやいて
とっくらきゃしてやいて
しょうゆをつけてたべたら
うまかろう~ ♪
みんなが好きな味付けのお餅を食べて、親子の時間は終わりました。
■子どもの時間■
子どもの制作では、さっき絵本で読んだ「だるまさん」と「うず巻ヘビごま」を作ります。
だるまさんは、先生が何度も試作をして、丁度よく転がるように工夫されています。
最初にだるまさんの顔を描きます。
顔の部分を白く塗って、目や口を描き入れます。
お手本を見ながら、慎重に描いてますね。
どんな顔にしようか迷ってますね。
大丈夫?とお友達が心配そうに見ています。
お姉さんが助っ人に入って、描き方を教えてくれます。
それなら安心。
僕は自分の作業を進めよう。
だるまさんができたら、ヘビの色を塗りましょう。
何色がいいか、迷いますね。
僕は水色。
色を塗ったら、お姉さんが切り取って、こまの土台に貼り付けてくれます。
■大人の時間■
最初にテーマ絵本の読み聞かせから始まりました。
おじいちゃんとおばあちゃんの家で過ごす年末の風景が丁寧に描かれています。
大掃除のお手伝いでは、障子の張替えなど懐かしい場面もあります。
水をかけて障子紙を剥がし、新しい紙を貼ったら霧を吹いてピンと張るなど、細かい手順まで。
大掃除が終わったら、お餅つき。
餅米を蒸して、石臼でペッタン、ペッタンつきます。
つきたてのお餅で、鏡餅を作ったり、あんこ餅を作ったり。
大晦日には市場にお正月用品の買い物にでかけます。
お節料理の準備や鏡餅をお供えする様子なども細かく描写されています。
年越しそばを食べて、除夜の鐘をつきに行って、新年を迎えます。
この絵本は期間限定なので、読みたくても幼稚園では取り上げるのが難しい本だそうです。
冬休み前はクリスマス一色で、冬休みが明けるとお正月の本になってしまいます。
小さい子にはちょっと長くて難しいし、絵が細かいので大勢に読み聞かせするには見せにくい部分もあります。
昭和真っ只中に育った人間には懐かしい、という風景ですが、若いお母さんや先生方にとっては、何となく聞いたことがある『三丁目の夕日』みたいな映画の世界のように感じるかもしれません。
それは仕方のないことで、子どもと一緒に新鮮な気持ちで楽しめば良いと思います。
今回は、「絵本を通して伝えられること」ということで、子どもたちに残したい行事や風習に関する絵本を選んでみました。
しめ飾りは、年末になれば露店だけでなくスーパーにも売られていますね。
お正月の装飾品のような扱いにもなってきていますが、本来は年神様を迎えるための神聖なものです。
この絵本では、しめ飾りの素材から作り方、各地のしめ飾りの形の違い、込められた意味などが詳しく描かれています。
今は、パソコンで検索すれば知りたいことがすぐわかる時代ですが、子どもと一緒に楽しみながら学べるのが絵本の良さではないでしょうか。
『もうすぐおしょうがつ』や『しめかざり』のような本は、お正月についての知識をつけるために読んでは子どもは楽しめず、本に対して拒絶反応が出るかもしれません。
「へーこんなことがあるんだ、面白いね」と純粋に子どもと一緒にいろいろなことを面白がってください。
逆に保育者側としては、いい加減な知識で適当なことを言うわけにはいきません。
例えばお正月のお話をするのに、門松や鏡餅などについて何となくわかったつもりで話していませんか?
ある程度は正しい知識を身につけた上でないと、子ども向けに噛み砕いて説明することはできません。
知らないことを聞かれたら、適当に答えるのではなく、それはわからないから調べておくね、と誠実に対処しましょう。
中には、先生が言うことは絶対正しい、と信じている子もいて、一度聞いたことを信じ込んでしまうかもしれません。
くれぐれも、子どもだからと思っていい加減な対応はしないでほしいですね。
これは、10ぴきのかえるが、大掃除をしたり、お餅つきをしたり、お節料理を作ったり、羽つきや凧揚げをして、お正月を楽しむお話です。
この絵本も、「これは何だっけ?」「これ知ってる?」「これは・・・」などとお正月の知識をつけようと質問したり説明して教えようとすると、子どもはかえるの世界からふ~っと現実に引き戻されてしまいます。
物の名前や知識を覚えるよりも、かえるの世界に入り込んで、かえるの気分でお正月を楽しんでください。
十二支の絵本もたくさんありますね。
これは、十二支の動物たちにお正月準備の役割分担をさせて、大掃除や、お餅つき、お節料理の準備をするお話です。
3~4歳から小学生まで楽しめる絵本です。
版画調のくっきりした絵ですが、それぞれの場面が細部まで細かく描かれています。
大勢の子どもに読み聞かせをするのには、見えにくくて難しいかもしれません。
幼稚園や保育園などでは、一回全員に読み聞かせをしてから、少人数で個別に一緒に見てあげると良いと思います。
家庭で読んであげる場合もそうですが、1ページずつじっくり絵を見ながら、ここにこんなものが描かれているね、など子どもと一緒に発見を楽しめます。
100こめのクリスマス・ケーキ―クリスマス・イブのおはなし2
これは、触れてみたくなるような刺繍で表現された、クリスマスのかわいい絵本です。
楽しいお話なので、保育者がたくさんの子どもに見せながら読んであげたい、と思っても無理があります。
よく見えないので、面白さがわかりません。
このように、小さな本や、大きくても絵が細かい本などは、2~3人以下で個別に読んであげたいですね。
中には、集団で読むことで楽しめる絵本もあります。
『いろいろおせわになりました』というわらべうた絵本などは、毎ページ作者のしかけがあり、読むたびにいろいろ発見のある絵本です。
ただ大人しく受け身で聞いている子も、誰かが「あそこが違ってる」と発言すると、「あ、ここも違う」と刺激を受けて発言したりします。
家庭や個別で静かに読むのとは違った刺激があるのが、集団での読み聞かせの楽しさでもあります。
クリスマスやお正月などの行事の絵本は、先に絵本を読んでから、あの絵本と同じだね、と実際に体験して確認する場合と、お餅食べた?など体験を思い出しながら後から絵本を楽しむ場合があります。
実際の体験と絵本の世界をいろいろリンクさせながら、子どもの空想の世界は広がっていきます。
実際には体験できない絵本の世界もあります。
現実にはない不思議なお話をたくさん読むことによって、実際の体験で空想をふくらませることもできます。
大きな木の洞を見つけて、「これは木が腐って空洞になったもの」と現実的に説明して通り過ぎるか、「あれ、この中に何かいるのかな?」と立ち止まって問いかけるかでも、子どもの反応は違ってきます。
実際の動物を想像するか、まったく別の世界への入口を想像するかは、それまでの子どもの体験によって違うでしょう。
何を見ても何の関心も持たずに通り過ぎるか、科学的な興味にせよ、空想の世界にせよ、何かに興味を示し、発想を広げていくかは、小さい頃からの体験次第です。
お正月の過ごし方も家庭によっていろいろで、スキー場で過ごしたり、ホテルのお節料理を食べたり、海外で過ごしたりと、お正月のイメージも絵本とは違ってきています。
生活様式も考え方も変わってきているので、みんなが同じようなお正月にすることはありません。
ただ、お正月に限らず、日常の習慣や生活すべてが、子どもたちに受け継がれていきます。
自分を振り返ると、両親が作っていたお節料理も作らず、きちんと大掃除をして年越しもせず、子ども達にはなんてダラけたお正月のイメージを残してしまったのだろう、と後悔しています。
今年は一念発起して、一通りのお節料理を作ってみました。(子ども達は特別喜びませんが)
積み重ねてきた記憶やイメージは消せませんが、自分の親はこうしてくれたな、というイメージを少しでも子どもにも伝えたいと思います。
絵本で子どもたちに伝えたいこと、伝えられることもたくさんありますが、実際の体験とリンクさせながら、子どもたちのイメージを育てていくことが大切ですね。
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