2012年12月8日(土)2時~4時にキッズ・ブック・スペース【クリスマス絵本】を開催しました。
たくさんあるクリスマス絵本の中から、サンタクロースを待ちわびる子どもの幻想的な絵本と、世界のクリスマス風景を知ることができる絵本をご紹介しながら、クリスマスの話題で盛り上がりました。
クリスマスのことを何も知らないと見過ごしてしまう絵本の中の風景も、いろいろ知ることで納得し、より深く楽しめることがわかりました。
■親子の時間■
いつものように♪はじまるよ♪の歌から始まりましたが、最初はエンジンがかからない子もいます。
初めてではなくても、場所見知りや人見知り、その場の雰囲気にすぐに慣れないなど、いろいろな理由でモジモジしていたり、お母さんから離れられないこともあります。
でも先生は気にしませんから大丈夫!
やる気になったら一緒にやればいいし、やりたくなければ見てるだけでもいいんです。
お父さんやお母さんも、気を揉まなくて大丈夫ですよ。
そのうち興味を引かれることが出てくれば、自分から乗り出してきます。
先生はあせらずに、様子を見ながら興味を引き出してくれます。
お馴染みのおさるのモンちゃんも参加して、♪山小屋いっけん♪を歌いながら、手遊びをしました。
♫
山小屋いっけん ありました
窓から見ている おじいさん
かわいいうさぎが ぴょんぴょんぴょん
こちらに逃げてきた
助けて助けておじいさん
猟師の鉄砲怖いんです
さあさあお早くお入んなさい
もう大丈夫
♫
安心したところで、毎回お馴染みの『ととけっこう よがあけた』です。
絵本の中の動物達を、♪ととけっこう よがあけた♪とみんなで歌いながら起こしてあげました。
大人は、何度も同じ本を読まされると飽きてきて、「別の本にしない?」と言いたくなります。
でも子どもは、同じ本を何度でも読みたがるものです。
知ってる本を読んでもらうことで、安心感が得られるのでしょう。
特に、毎回違うメンバーが集まるキッズ・ブック・スペースでは、最初に知っている歌や知っている絵本に触れることで、緊張もとけて本来の姿を見せてくれるようになります。
次の絵本は『おめでとう』
クマのポトフくんの家に、おみやげを持った動物達が次々とやってきます。
「お誕生日おめでとう」とウサギくん。
「クリスマスおめでとう」とキツネくん。
「あけましておめでとう」とリスのおじょうさん。
「ゆきどけおめでとう」とタヌキくん。
「おめざめおめでとう」とカモシカくん。
お誕生日もクリスマスもお正月も雪解けもまだだし、まだ寝てもいないのに、どうしてでしょう?
いっぱいおめでとうって言ってたね。何おめでとうって言ってた?
「お誕生日!」
みんなも、お誕生日おめでとうってしたことある?
「四歳のお誕生日やった!」
そうなんだ。おめでとう!
「1と2と1で四歳」
1と2と1?ああ、1月21日にお誕生日なのね。おめでとう!
クリスマスおめでとう、とも言ってたね。
もうすぐクリスマスだね。
みんなの幼稚園やおうちにもクリスマスの飾りあるかな?
クリスマスツリー?ローソク?
クリスマスの飾りやサンタさんや、そのほかクリスマスのことがいろいろわかる絵本があります。
『クリスマス・クリスマス』は、『魔女の宅急便』の作者・角野栄子さんが、クリスマスに関する疑問を調べるためにいろいろな国を訪れ、各国のクリスマスの祝い方を教えてくれます。
おうちにも、こんなクリスマスツリーがあるのかな?
ローソクや、電気がいっぱいのクリスマスツリーもきれいだね。
それから、この人誰?
「サンタさん!」
大きいお腹のサンタさんだね。
サンタさんは今どこにいるんだろうね。
すると、絵本のサンタさんを指さす子が。
あ、ここにサンタさんいるね。
サンタさん何やっているんだろう。お仕事かな?
「プレゼント用意してるの」
プレゼント用意してるんだ!みんなのプレゼントもあるかな?
「みーんなのプレゼント用意してるの!」
そうか、みーんなのプレゼント、どうやって持ってくるんだろうね?
「こうやって」と袋をかつぐ真似をして歩き出す子が。
「こうやって泥棒みたいにくるの」
えー、泥棒みたいなの?そうなんだ。
サンタさんは、みーんなに一つずつプレゼントを用意してくれるんだよね。
みんなのプレゼントを用意したあと、サンタさんは何するのかな?
ふしぎな箱が落ちていました。
中を覗くと、サンタさんが寝ています。
ぼくは、ベッドの下にサンタさんの箱を隠しました。
お母さんに「サンタさんはもう出発したかな」と聞くと、
お母さんはクリスマスの準備をしながら「お寝坊してないといいけどね」と答えます。
そっと箱を覗くと、サンタさんは出発の準備をしていました。
箱を覗くたびに、少しずつ近づいてくるサンタさん。
ぼくんちにくるかな。
もうすぐ、ぼくんちにくるよね。
サンタさんは本当に来てくれるのか、という子どもの期待と不安がいっぱいの素敵な絵本です。
みんなの所に来るサンタさんも、お寝坊しないでちゃんと来てくれるかな。
クリスマスにサンタさんがお寝坊したら、大変だね。
サンタさんを起こす歌を歌ってみようか。
サンタさんの前に、もぐらさんで練習するよ。
土の中でお寝坊してるもぐらさんを、歌って起こしてね。
♪もぐらどん♪
もぐらどんの おやどかね
つちごろり まいったほい!
もぐらさん、もぐらさん、朝ですよ、起きてくださーい!
隠れていたもぐらさんが、「おはよう」と言ってぬーっと出てきました。
今度は♪もぐらどん♪を歌ってから、サンタさんを起こしてみましょう。
サンタさん、サンタさん、もうすぐクリスマスですよー
「はいはい、プレゼントの準備をしますよー」って、サンタさん起きてくれたかな~
みんなが起こしてあげたサンタさんが出てくる絵本があるんだ。
クリスマスの前の日、山の上に住むりりこちゃんは、山の下に住むおばあちゃんにヤマブドウのジュースを届けるために出かけました。
山を降りる途中、ジュースのビンが雪の上に落ちて転がってしまいます。
ジュースのビンは雪玉になって、りすさんを巻き込み、うさぎさんを巻き込み、きつねさんを巻き込み、くまさんを巻き込み、みんなにプレゼントを渡そうと山を登ってきたサンタさんまで巻き込んで転がっていきます。
ごろん ごろん どっしーん!とおばあちゃんのうちへつきましたが・・・
りりこちゃんは、サンタさんから何のプレゼントをもらったんだろうね。
「帽子!」
裏表紙には、プレゼントを開けたりりこちゃんが・・・
本当だ。赤い帽子をもらったんだね。
「雪の帽子!」
そうだね、雪の日にあったかそうな帽子だね。
最後の文字のないページや裏表紙の絵まで絵本の一部です。
表紙から始めて裏表紙まできちんと見せるというのは、絵本の読み聞かせの基本ですが、裏表紙にまで神経が行き届いた絵本というのは嬉しいですね。
表紙や裏表紙、時には見返しの部分にも、いろいろな工夫がされている絵本がたくさんあります。
何度も何度も読むうちに、新たな発見がある絵本もあります。
そんな風に丁寧に作られた絵本に、たくさん出会いたいですね。
■子どもの時間■
サンタさんにみんなの欲しいモノがわかるように、お手紙をいれておける靴下の形のトナカイバッグを作ります。
何色の靴下がいいかな?
「ピンク!」
「黄色!」
「ピンク!」
靴下を開いたら、頭に角を貼り付けます。
角がついたら、裏返して耳を貼ります。
みんな自分で上手に貼れるんだね~
できたら、表にトナカイの顔を描いてね。
今度は、折り紙でクリスマスツリーを作ります。
角と角をくっつけて、三角形を折って・・・
ツリーの形ができたら、飾りの丸いシールを貼ります。
きれいなクリスマスツリーができました。
出来上がったクリスマスツリーを、靴下の裏に貼ります。
まわりには好きなを描いてね。
お姉さん達が、リボンの持ち手をつけて、貼り合わせてバッグにしてくれます。
素敵なトナカイのバッグができました!
今度は、バッグに入れるトナカイを折り紙で折ってるのかな?
自分のじゃないの?
お友達にあげるために、トナカイを作っているんですって。
顔を描いて、お友達の名前も書いて、かわいいピンクのトナカイができました。
■大人の時間■
クリスマスの絵本は、毎年新しい本が出版されて、選びきれないほどたくさんあります。
今回は、『絵本を通して知るクリスマス』ということで、クリスマスの意味や世界のクリスマスの過ごし方がわかる絵本を中心にご紹介しました。
日本では一般的に、お正月は神社に初詣に行き、赤ちゃんのお宮参りや七五三も神社にお参りし、お葬式はお寺で行い、結婚式は教会や神社で行うなど、宗教にあまりこだわりがありません。
ひな祭り、お彼岸、端午の節句、七夕、お盆、お月見、ハロウィン、クリスマスなど、一年中いろいろな行事で様々なものに畏敬の念を抱き、お供えをします。
宗教に対して、悪く言えば節操がなく、良く言えば寛大な民族で、宗教戦争などとは無縁の国です。
クリスチャンの先生は、神社やお寺とは無縁で育ち、初詣も七五三もお寺での法事も、結婚後初めて経験したそうです。
その代わりクリスマスに関しては詳しく、初めて聞くような“アドベント・カレンダー”や“アドベント・クランツ(アドベント・リース)”などを知らない一般日本人との間に文化的格差があったりします。
ターシャ・テューダーの『ベッキーのクリスマス』に「12月6日!アドベントカレンダーの初めの扉をあける日です!」という文章があります。
それからベッキーは、毎朝カレンダーの扉を一つずつ開き、お姉さんが作ったかわいい小物に感激するのですが・・・
6日から始まるカレンダー?
曜日には関係なく、日付の扉がバラバラに配置されたカレンダーって何?
最近は日本でも、チョコレートが扉の中に入ったアドベントカレンダーが売られているそうです。
知らないのは年齢格差だと言われましたが、まだ若いお母さんも知らなかったそうです。
いただきもののチョコのアドベント・カレンダーを、箱の横から開けてしまったということです。
アドベント(待降節)は、12月25日の4回前の日曜日からクリスマス・イブまでの期間をいいます。
クリスマスの飾り付けや料理やクリスマスカードを送る準備をする期間でもあります。
最初の日曜日に、四本のローソクを立てたアドベント・クランツ(アドベント・リース)が飾られ、1本目のローソクに火がつけられます。
日曜ごとにローソクを灯していき、クリスマス前の最後の日曜日に4本全部のローソクに火がつきます。
アドベント・カレンダーは、バラバラに日付がついた扉が並んだアドベントの期間のカレンダーです。
最初の日曜日から一つずつ扉を開け、中のお菓子やオーナメントなどを楽しみながらクリスマスを待ちます。
『ベッキーのクリスマス』の見返しには、手作りのアドベント・カレンダーの絵が描かれています。
アドベント・クランツは、知らないと見過ごしてしまいますが、ターシャ・テューダーのクリスマスの本や『やかまし村のクリスマス』など、海外のクリスマス絵本には、クリスマス風景の中に何気なく描かれていることに気づきます。
ミッフィーの作者、ディック・ブルーナの『クリスマスってなあに』には、神の子どもであるイエスの誕生とそれを祝いに訪れた3人の学者のお話がわかりやすく描かれています。
イエスは、旧約聖書で天地を作った神ではなく、神が人間を救うために遣わした存在、ということです。
イエス・キリストとは、救世主のイエスということで、様々な解釈の違いで多くの宗派がありますが、唯一の神の子であるイエスを救世主と信じるキリスト教では、イエスの誕生日が大切な行事の一つです。
といっても、本当のイエスの誕生日は聖書にもないのでわかりません。
クリスマスが12月25日に定着したのは、イエスの誕生から何世紀もたってからです。
世界中には様々なクリスマスの祝い方があります。
飾りも、食べ物も、過ごし方も国によって様々で、プレゼントをくれる人もサンタクロースとは限りません。
イタリアでは、魔女のベファーナが、良い子にはプレゼント、悪い子には靴下に炭をいれていくそうです。
ドイツでは、北部では「降誕祭の男」、南部では「キリストの子」が、良い子にだけプレゼントをくれるけど、悪い子は木の枝でムチ打つということです。
中には、怖い鬼のお面をつけて、子どもを袋に入れて連れ去るぞ、と脅すムチ打ちおじさんもいます。
秋田のなまはげのような風習ですね。
メキシコでは、クリスマス前の9日間、毎晩違う家でポサダというパーティーをします。
幼稚園に通うセシという女の子は、初めてポサダに参加できることになり、期待をふくらませます。
ポサダでは、粘土の壺の周りに紙を貼り、動物や星やいろいろな形の張りぼての飾りにしたピニャタというものを飾ります。
セシは初めて自分のピニャタを買ってもらえることになり、キレイな金色の星のピニャタを選びます。
ピニャタは、中の壺に果物やお菓子などを詰めてポサダの日に吊るし、子ども達がスイカ割りのように割って、落ちたお菓子をもらうのです。
でもセシは、お気に入りの星のピニャタが割られるのがつらくて、見ていられません・・・
『長くつ下のピッピ』を書いたスウェーデンの作家、リンドグレーンの『やかまし村の春・夏・秋・冬』から、クリスマスの部分を絵本にしたのが『やかまし村のクリスマス』です。
北欧のクリスマスの様子を知ることができます。
北欧のクリスマスはユールと呼ばれ、元々は冬至のお祭りを指す言葉です。
冬場に餌の少ない小鳥のために、ユール・ネックと呼ばれる麦の穂束を立てたり、ユールログという大きな薪を燃やす習慣があります。
ユールログを家に運ぶ時、一番年少者は薪の上に乗ることができるということです。
やかまし村の一番小さい女の子も、薪の上に乗って運ばれていました。
北欧のサンタクロースは、ユールトムテと呼ばれる小人のおじいさんです。
煙突から入ってくるのではなく、子どもたちに直接プレゼントを手渡すそうです。
いつの頃からか、日本でもサンタクロース伝説を守るために、親は必死で頑張るようになりました。
少しでも長く夢を見させてあげたい一心で、子どもが欲しいものを聞き出し、ネットのない時代にはお店を探し回り、イブの夜まで隠す場所を探したりと大変でした。
サンタクロースは、国によってはプレゼントをくれるだけの良いおじいさんだけではなく、悪い子にとってはなまはげのような怖い存在だったりもします。
おばけと同様、目に見えなくてもいると信じることで、どんな行いをすべきなのかを判断させる存在なのでしょう。
サンタ・クロースからの手紙 (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
『指輪物語』の作者、トールキンは、自分の子どものためににサンタクロースの代わりに手紙を書いてあげていました。
『サンタ・クロースからの手紙』では、手紙の翻訳だけでなく、トールキンが書いた何年分もの文章や絵を見ることができます。
サンタが寒い国で震えながら書いたような、それでいて素晴らしいカリグラフィーの文字で、サンタの日常やお手伝いの北極熊の話などが綴られています。
トールキン自身の絵で、サンタの様子やサンタの国の風景も描かれています。
ここまでするのか!と偉大な親心に感心してしまいます。
宗派がいろいろあるとはいえ、同じキリスト教を信じる国で、まったく異なる祝い方があるのは不思議ですね。
それは、クリスマスという行事が、必ずしもイエスの誕生を祝うためだけのものではないからです。
イエスの誕生以前に、世界各国には日本の神話のように様々な神話があり、太陽、月、火、水など様々な自然に神様がいると信じられていました。
夏至や冬至などの季節の変わり目にはお祭りがあり、自然の変化に畏敬の念を抱いていました。
キリスト教は、「父と子と聖霊」のみを神様として信仰しています。
そのために、それまでの神話のたくさんの神様は否定されたわけですが、長年続いた風習やお祭りまで廃止することはできませんでした。
各国の冬至のお祭りとクリスマスが結びついて、世界のクリスマスになったそうです。
ところで、日本ではクリスマスが終わると、今度はお正月の準備に切り替わります。
バレタインデー同様、商業主義から来るのでしょうか?
中国の日中比較文化研究者が、日本に来てお正月にお屠蘇を飲んでビックリしたそうです。
中国で千年も前に失くなった文化が日本に残っていたということで。
七草粥、端午の節句の菖蒲湯など、中国ではとっくに忘れられて古典文学にしか残っていない文化が、日本の至るところに残っているそうです。
ところが、桃の節句などのように、起源は中国でも、雛人形を飾るなど日本風に変わっているものも多く、日本人の多くが、元は中国の行事だったことを知りません。
日本人は、海外からモノも行事も受け入れ、それを自分達の心地良い形に変えながら大切に保存してきたようです。
他国のものも受け入れるけれど、それまでの自分たちの文化も捨てずに、両立させたり融合させてきました。
だから、華やかなクリスマスも大好きだけど、終わった途端に年末気分に切り替わり、お正月には初詣に行くんですね。
多くの日本人が、イエスの誕生やクリスマスの意味も知らず、クリスマスのイルミネーションやクリスマスケーキ、クリスマスプレゼントを楽しんでいます。
でも時には、絵本を通して世界のクリスマスの由来やクリスマスの過ごし方を知るのもいいものです。
できれば、世界中の人が戦争をやめて、宗教に関係なく年末行事として、地域ごとのお祭りができないものかと思います。
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