2012年11月24日(土)2時~4時にキッズ・ブック・スペース【食べたくなる絵本】を開催しました。
三連休の中日にも関わらず、1~4歳の子ども達とお母さんの参加で、楽しく過ごしました。
子ども達の発想と発言の面白さが実感できるシーンでは、大いに盛り上がりました。
絵本と子育てのお話をする大人の時間では、食育などのお話もしながら、食べ物に関わる絵本のご紹介をしました。
■親子の時間■
♪はじまるよ♪の歌をみんなで歌うと、先生とおしゃべりをしたくて仕方のない子も落ち着いてきました。
何回も参加をしている子にはお馴染みのおさるのモンちゃんも、♪ととけっこう よがあけた♪を歌って起こしてあげると、仲間に入ってきました。
モンちゃんは、みんなと一緒にちゃんと参加できたら、本物のりんごをもらえることになりました。
でも、まだ食べちゃダメだから、みんな見張っててね。
みんなはお腹すいてないかな?
「すいてない~」
でも、この本を読んだら、お腹すいちゃうかも。
『おなかが すいた』
おなかをすかせたウサギやワニやキツネが、嬉しそうにニンジンやキャベツやおむすびを食べて、あーおいしかった!
なんだかお腹すいてきたね。
こんなものがあるんだけど、何かわかる?
小さなケースに、白っぽい小さなものが入っていて、振るとシャカシャカ音がします。
「ビーズ!」
「お砂糖!」
「お米!」
フタを開けると、お米でした。大正解!
これ食べる?食べられない?どうして?
このままじゃ食べられないね。どうしたら食べられるかな?
「ボールとかに入れて、水を混ぜて、お米入れるとこに入れると食べられる」
うーん、どこに入れるかが難しいね。
「新幹線みたいのに入れるの」
あー、銀色の新幹線みたいなかっこいい炊飯器なんだね。
「そうすると、ご飯になって、かき回して、おいしくするの」
良くわかってるね~。ちゃんと蒸らすんだね。
次々と、自分なりの発想でお米からご飯にする方法を教えてくれました。
ホカホカに炊けたご飯をどうやって食べる?
「おかかをかけて食べる」
渋いね~
「シャケがいい」
それなら、こうやって、手でにぎって、何つくろうか?
「おにぎり!」
「あとね、のりとか巻く」
もう、おいしそうだね~
じゃあ、みんなでおにぎり作ろうか。
♪つくろう つくろう おにぎり つくろう♪
おにぎりの中には何入れようか?
「コブ!」
また渋い趣味が出たね。
「甘い梅干し」
「りんご!」
えー、おにぎりにりんご?
みんな好きなおにぎりを食べたら、今度は焼きおにぎりを作ろうかな。
♪もちっこやいて♪の歌をちょっとおにぎりに替えて、焼きおにぎりを作りましょう。
♪おにぎりやいて とっくらきゃして やいて しょうゆをつけて たべたら うまかろう.♪
おしょうゆじゃなくて、またりんご?
みんな好きなものをつけた焼きおにぎりを作って食べました。
今度は、みんなが作ったようなおにぎりの本です。
本当に熱い湯気が感じられそうな熱々のご飯を、ぎゅっぎゅとにぎっておにぎりを作ります。
見てる子も一緒に、ぎゅっぎゅとにぎっていました。
大きいのや小さいのや中くらいのや、たくさんのおにぎりができました。
おべんとう用に包んで・・・え?今すぐ食べたい?
しょうがないなあ、では包みをほどいて・・・
どれ食べる?
3歳の男の子は、
「一番大きいの!」
と言って、アグアグアグと豪快に食べました。
1歳の女の子は、指でつまんで口に入れました。
まだお話もできない位小さくても、ちゃんと絵のおにぎりをあるつもりになって食べられるんですね。
4歳の女の子は、
「お母さん達にも食べさせてあげないと」
と言って、お母さんにもおにぎりを取ってあげていました。
おにぎりを作ったら、今度はお弁当を作りましょう。
どれくらいのお弁当箱かな?
「おっきいの!」
じゃあ、思いっきり大きなお弁当箱におっきなおにぎりね。
♪これっくらいの おべんとうばこに
おにぎり おにぎり ちょっとつめて・・・♪
思い切り手を伸ばして、全身でおっきなおべんとうを作ったら、今度は小さい子用のちっちゃなおべんとうも作ろうね。
みんなのお弁当を作ってたら、こんなおいしそうな本を見つけちゃった。
熱々のご飯をいれて、ミートボール、卵焼き、タコさんウィンナ、ブロッコリーと次々と詰めていきます。
最後はデザートのイチゴ。
「おいしそう!」
「食べたい!」
食べたいけど、さっきおにぎりと焼きおにぎり食べたから、食べ過ぎじゃない?
イチゴもいいけど、モンちゃんにあげたりんごもおいしいよね。
「モンちゃんが、りんごなめてた!」
えー、本当?
「今、かじってた!」
どれどれ、大丈夫、まだかじったあとはないから。
またかじらないように、しっかり見ててね。
子どもは、大人が見えない物がたくさん見えて、面白いですね。
お弁当のデザートの話からりんごの話をする予定が、モンちゃんの話でひとしきり盛り上がりました。
普段の生活でも、忙しいとなかなか子どもの発想の相手をしてあげられないものですが、ウソばっかり、などと否定することなく、時には空想の世界に一緒に入って、存分に付き合ってあげたいものです。
『おおきなあかいりんご』
今度は、モンちゃんが持ってるみたいなりんごがたくさんなってる木のお話。
リスやカラスやネズミがやってきて、りんごを取っていきます。
最後に一つ残ったりんごは・・・
裏表紙には、かじったあとのあるりんごがたくさんありました。
だれが、どのりんごを食べたのかな?
絵本は、裏表紙にまで楽しめるしかけがあったりします。
中味を読んでおしまい、ではなく、表紙から始めて、内容の余韻を楽しみながら、最後の文字のない画面や裏表紙の絵まで楽しんでください。
■子どもの時間■
さっきは、体を使って“おべんとうばこ”を作りましたが、今度はお弁当箱の制作をします。
何色のお弁当箱がいいかな?
好きな色のお弁当箱のフタに、好きな絵を描きます。
「とがったウルトラマンを描く!」
うーん、どんなウルトラマンのお弁当箱か楽しみだね。
次に、お弁当箱につめる、おにぎりやおかずを作りましょう。
ごはんにつけた赤い色は何?シャケかな?
「りんご!」
あ、このおにぎりも、りんご入りなのね。
自分の分のお弁当箱を作ってしまうと、
「今度はママの分も作る」
さっきのおにぎりといい、いつもお母さんのことを気遣っているんですね。
■大人の時間■
食べ物のおいしそうな絵本はたくさんあります。
「ぐりとぐら」や「しろくまちゃんのほっとけーき」などのホットケーキ、「ぱん だいすき」「おだんごぱん」などのパン、くだもの、おにぎりなどはそれだけで何冊もの絵本があります。
一年間、毎月食べ物をテーマにできるくらいなのですが、今回はりんごとお弁当にしぼって選びました。
個人的にくだものやジャム作りが好きで、“ジャム”とタイトルにあるだけで惹かれてしまう、というのも理由ですけどね。
『ジャムおじゃま』は、主夫になったパパが、庭に実ったプラムでジャムを作るお話。
みんなが大喜びしたので、調子に乗ってどんどんジャムを作ったら家中ジャムだらけで、毎食毎食ジャムを食べることになり、みんなウンザリ。
一生懸命みんなで食べて、どうにかジャムの瓶を片付けたと思って庭を見ると・・・
『パパがやいたアップルパイ』は、詩人の谷川俊太郎さんの翻訳で、リズムのよい言葉の繰り返しが楽しい絵本です。
「りんごは、パパが焼いた甘くて熱々アップルパイになりました」
という言葉に、ページごとに別の言葉が重なっていく、つみあげうたになっています。
素朴な色彩の絵に、真っ赤なりんごが際立って、パパが焼いてくれたパイの温かさが伝わってくるようです。
テーマ絵本の『じゃむ じゃむ どんくまさん』は、やる気はあるけど、ちょっとドジなどんくまさんシリーズの一冊です。
どんくまさんが昼寝をしていると、りんごが頭に落ちてきます。
すずなりのりんごの木をゆすって、面白がってりんごを落としていると、木の持ち主がやってきて、落ちたりんごを全部運んでほしいと言います。
どんくまさんは喜んで運んであげると、そこはジャム屋さん。
気のいいどんくまさんは、ジャム作りを手伝って、町に売りに行きますが・・・
このどんくまさんの絵本を、幼稚園の年長クラスで読んだ後、
「どんくまさんから、ジャムを買ってきたんだ」
と、どんくまさんのラベルを貼ったジャムの瓶を見せたそうです。
すると子ども達は、「わあ、どんくまさんのジャムが本当にあるんだ」というように息をのんで見つめたそうです。
幼稚園や保育園では、絵本のお話を劇や絵に描いて表現したり、絵本の世界を自分たちの世界につなげることがあります。
普段の生活では、そこまで絵本の世界を広げることはなかなかできませんね。
でも、子どもが空想の世界に入って何かになりきっている時は、そっとしておいてください。
習い事などで子どもの時間が少なくなっていますが、絵本を読んであげるだけでなく、子ども達が空想の世界で遊ぶ時間を、なるべくたくさん取ってあげてほしいと思います。
『おべんとう』と同じ作者の『サンドイッチ サンドイッチ』は、パンにいろいろなものを挟んでいく過程が丁寧に描かれています。
作者はこの絵本を作るまでに、いろいろなパン屋さんのたくさんのパンを試したり、チーズやハムもいろいろ味見して、どれをどうやって描いたらおいしそうなサンドイッチができるか、苦心したそうです。
そっくり同じ物を作るのは大変でも、読んだ後、家族で実際にサンドイッチを作って食べると、楽しいでしょうね。
『ぐりとぐら』は、1963年に発表されてから、世代を越えて読み継がれている絵本です。
お料理すること、食べること、がこの世で一番好きという双子の野ねずみが、大きなタマゴを見つけて、おいしそうなカステラを作ります。
食べたくなる絵本の定番ですね。
『ぐりとぐら』のシリーズに『ぐりとぐらとすみれちゃん』という、人間の女の子が出てくる本があります。
ぐりとぐらとすみれちゃん (こどものとも傑作集―ぐりとぐらの絵本)
すみれちゃんが持ってきた、大きくて固いカボチャをお料理するお話です。
このすみれちゃんには、モデルがいます。
脳腫瘍のために4歳で亡くなった、『ぐりとぐら』が大好きな女の子です。
入院して食事も思うように取れなくなった時、『ぐりとぐら』シリーズに出てくるカステラやお弁当を見て、食べる真似をしていたそうです。
すみれちゃんが亡くなってから、お母さんが作者の中川李枝子さんに手紙でその様子を伝えました。
それから作者とお母さんとの文通が始まり、すみれちゃんの好物がカボチャだったことを知ります。
すみれちゃんは『ぐりとぐら』の世界で、カボチャが好きな元気いっぱいの女の子として永遠の命を吹き込まれました。
大きなカボチャを、豪快に投げ飛ばして割ったりするんです。
最後はたくさんの動物達と一緒に、カボチャのいろいろなお料理をおなかいっぱい食べています。
食べたくても食べられない子もいれば、食べられるのに食べない子、食の細い子もいます。
そんな時、おいしそうな絵本を見せて、食べる真似をさせることで、食べる意欲が育つこともあります。
1歳近くになると、絵本の食べ物を食べる真似をします。
2歳頃になると、みんなで同じ本を一緒に楽しむこともできます。
『ぱん だいすき』でいろいろなパンが並んだページでは、
「どのパンが好き?」
と聞くと、小学生でも「これ」とつまんで食べる真似をします。
大人だって食べたくなるほど、おいしそうですからね。
絵の中から、甘い香り、酸っぱい香り、しょっぱい味、熱々の湯気などが感じられるものは、五感を刺激します。
実際にはないものを感じるのですから、それ以上の感覚も刺激しているはずです。
そんな食べたくなる絵本を、好き嫌いしないようにとか、お行儀良く食べるための躾けなどに利用しないでください。
どこか素敵な場所にでかけたつもりになったり、お料理しているつもりになったり、子どもと一緒にいろいろな空想の世界に浸って、香りや味を感じて食べてみてください。
その記憶は、心の底にずっと残って、人として育っていく肥やしになるはずです。
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